3−36話:空 side
「んっ……ぅ……んー……」
ブー! ブー! ブー!
「んっ、んー……ふえ?」
僅かに感じる振動と、バイブ音にゆっくりと目がさめる。
音楽を聴きながら詩を書いていたらいつの間にか机に突っ伏して眠っちゃってたみたい。辺りには、乱雑に広げられた詩の山。
眠気まなこで、ぼんやりとした意識の中で誰とも確認せずに私は電話に出てしまった。
「ふぁい……」
《うぅー……くーちゃーん》
「ん? 氷華ちゃん?」
電話をしてきたのは氷華ちゃんだった。だけどなんだか少しだけ泣いているような声だった。何かあったのかな?
《宿題終わった?》
「あぁ……なるほど……もう少しで終わるよ」
《うぇーん! わかんないよー》
氷華ちゃんからのヘルプ電話。うん、質問からすぐにわかった。まぁ元々一緒に勉強しようって約束もしてたし……。
「明日なら見てあげていいよ」
《ヤッタァー!! くーちゃん大好き!!》
「はいはいありがとう」
本当に氷華ちゃんは調子がいいというか、なんというか……
「……ねぇ、氷華ちゃん」
《んー?どうしたのー?》
「先輩、家にいるの?」
ふと、聞くか迷ったけど、私は恐る恐ると言った感じで氷華ちゃんに聞いたら。だって、氷華ちゃん変に勘がいいから、なんだか自分の気持ちを悟られそうなんだもん!
《雪ねぇはね、今日バイト。最近忙しそう》
「そっ、か」
なんとなく残念に感じてしまった。そっか、今日は先輩バイトなんだ……ちょっとだけ、声聞けるかなって、期待しちゃった……
《……会いたい?》
「んー……そう、だね。でも、もうちょっとで詩ができるから、その時に会うから大丈夫!!」
会いたい会いたいって毎日のように思うのはダメだ。ちょっとは我慢しないと。それに、自分の気持ちを全部詩に込めて、先輩に伝えるって決めたんだ。今は頑張らないと。
「それじゃあまた明日ね」
《お菓子!》
「うん。なんか作っておくね」
そう言って、氷華ちゃんとの通話を終えた。
一度大きく背伸びをして、机の上に転がっていたシャーペンを手にする。
「よし! 頑張るぞ!!」




