3−32話:雪 side
「あぁ、ここも人が多いね」
「別の場所、探してみますか?」
人の少なくなった屋台を抜け、花火の見える場所を桜和さんと一緒に探し回った。
打ち上げられる約10分前。すでに人はいっぱいで、あまり綺麗に見える場所は無かった。それに、桜和さんのことも考えれば、なるべく人の少ない場所の方がいい。
「もう少し探してみよう。歩ける?」
「はい、大丈夫です」
人混みから離れつつ、人の少なくて、ちょっとした高台。そんなことを考えながら歩き回り、たどり着いた場所は……
「ここは……」
確かに今まで行った場所よりは人は少ない。だけどなんていうか……カップルばかり。もしかしてここって、カップルの穴場スポットだったりするのかな。
「別のところ探そうか」
流石にここは気まづいというか、ちょっと場違いな気もする。
私は、隣にいる桜和さんにそう声をかけながら来た道を戻ろうとした。
「ここでいいです」
少し恥ずかしがりながらも、繋いでる手にぎゅっと力を込めながら私を引き止めた。無理してないかな、大丈夫かな。そう思いながら、私は「じゃあ橋の方に行こう」と言って、カップル達から少し距離のある位置に移動した。
「この上に座って」
「え、でも先輩のハンカチが汚れて……」
「別に気にしないで。せっかくの浴衣が汚れる方が大変だよ」
地面に置いた私のハンカチを申し訳なく思いながら、私の顔と交互に見ていたけど、軽く頭を下げて、そのままハンカチの上に腰をおろした。
桜和さんが座ったのを確認して、私は彼女の隣に腰を降ろして空を見上げる。
「夜は涼しいね」
「そうですね」
昼間に比べて夜は本当に涼しい。強い日差しがない分、僅かに吹く風がなんだか心地いい。それでもやっぱり夏場なので暑さは感じ、額から汗が溢れ出す。
「でもやっぱり暑いですね」
「……そうだね」
桜和さんも同じで、苦笑いを浮かべながらひたいから溢れる汗を拭っていた。
だけど、全部を綺麗には拭き取れず、額の端の方に溜まった汗が頬を伝い、そのまま首筋に移動する。
同性なのに、なんでかその光景にひどく目を惹かれてしまう……




