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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
3章:春過ぎて、来たる夏は彼女とともに
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3−28話:空 side

 人波を先輩に手を引かれながら進んでいく。

 勢いで「手を繋いで欲しい」なんてお願いしてしまって、まさか受け入れてもらえるとは思わなかった。

 歩幅は私に合わせてくれていて、ホントに先輩は優しい……握っている手の感触を感じるたびに、心臓がバクバクと激しく動いてしまう。


「何か食べたいものある?」

「うぇあ!?」


 突然訪ねられたせいで声が少し上ずってしまった。咄嗟に口を押さえたけど、やっぱり先輩には聞かれていたみたいで笑われてしまった。すっごい恥ずかしい。


「私も緊張してるよ」

「え?」

「こうやって桜和おうかさんと手を繋いで、ドキドキしてる。一緒だよ」


 その言葉はすごく嬉しかった。先輩も、私と同じ気持ち。いつも通りのクールな感じかと思ってたけど……顔に出てなかっただけなんだ。なんだか少しだけ緊張が和らいだ。


 きゅぅ〜


「ふひゃっ!」


 気持ちが緩んだせいか、私のお腹がいまだ!というように鳴き始めた。さっきよりも恥ずかしくなって私の顔はみるみる赤くなっていくのがわかる。


「あー、ごめん。私のお腹だ。適当に何か食べようか。んー……あっ、あそこにたこ焼き売ってるよ」


 明らかに私のお腹の音だったのに、先輩は自分のことだと言った。多分、私が恥ずかしがってたからかもしれない。


「たこ焼き嫌いだった?」

「い、いえ!大好きです!」

「そっか。じゃあ行こう」


 先輩に手を引かれ、定番のたこ焼き屋でたこ焼きを食べて、その後はフランクフルトとミニカステラ、かき氷、綿飴と食べてばかりだったけど、先輩と一緒にいるだけで楽しかった。


「はぁ、お腹満たされたぁ」

「私も。ちょっときついです」

「あはは、食べ過ぎちゃったね」

「ですね。なんか食べ歩きみたいになっちゃってます」

「なら、他のも回る?射的とか型抜きとか。桜和さんはどこか行きたいところある?」

「そう、ですね……」


 私は何かないかと辺りを見渡した。

 あ、ちょっと遠いけど金魚すくいがある。ちょっとやってみたい。隣にはヨーヨー釣りもあるし、あっちの方の屋台行って見たいな。


「あれ、雪凪せつな?」


 不意に、誰かが先輩の名前を呼んだ。顔をあげて声のした方を向くと、数名の私服姿の女性が先輩に向かって手を振っていた。

 先輩の、知り合いかな……?


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