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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
3章:春過ぎて、来たる夏は彼女とともに
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3−25話:空 side

【着いた】

【すぐに行きます】


 一学期最終日。あっという間の三ヶ月……本当に気がつけばって感じだった。二学期はきっともっと早いかもしれない。文化祭に体育祭。イベントは盛り沢山だから。

 今日は雪凪せつな先輩と一緒にうちで打ち合わせする約束をしてる。先日、お姉ちゃんが曲をまとめた物を先輩に渡したので、「じゃあ終業式後にやろう」と言う話になった。


「お菓子はもう作ってるから大丈夫。ジュースは帰りに買えばいいか」


 いつもは私が書いた歌詞から先輩が曲を作るのだけれど、今回は逆。先輩が曲を先に作って、そこから私が歌詞を考える。

 だけど軽音楽部からの依頼はいつも通り。私が詩を考えて、できたら先輩に渡して、曲を作ってもらうと言う形。


「よし。帰り支度完了。急がなきゃ」


 今日は部活もない。氷華ひょうかちゃんも今回の打ち合わせに参加する予定だけれど、美術部の先生に呼ばれちゃって先に教室を出て行ってる。

 先輩はもういるから、私も先に行って氷華ちゃんを待とうかな。


「あ、桜和おうかさん」


 昇降口に向かう途中、名前を呼ばれて足を止めた。呼び止めたのは製菓部顧問である、甘木あまぎ先生。


「こんにちは」

「よかったぁ、帰ってなかった」

「えっと、何かご用ですか?」

「うん。これ渡そうと思ってね。興味あるかなーって」


 そう言って私にある一枚のチラシ差し出して来て、それを受け取った。


「お菓子の、コンペですか?」

「えぇ。八月下旬にあるんだけど……どうかしら。出てみない?」

「え!わ、私ですか?」


 正直興味はあるけれど……あまり自信はない。私の技術じゃ、こういったものに入選とか……結果は出せないと思う。


「出るなら調理室は自由に使っていいわ」

「でも、わ、私は……」

「……桜和さん。別に入選して欲しいとかじゃやないの。私ね、桜和さんには自信を持って欲しいの」

「自信、ですか?」

「えぇ。桜和さんのお菓子はどれも素晴らしい。でも、桜和さんが自分にブレーキをかけてる気がするの。”自分なんか”って」


 それを言われてドキッとした。だって、さっき思ったことを言い当てられたからだ。

 夏休みは、宿題と作詞の作業がある。バイトもしてない、時間はある。


「桜和さんは、将来どうなりたいとかある?」


 まだ考えたこともなかった。

 おかし作りは好きだし楽しい。将来はお菓子作りをしたいと漠然と思ってたけど、最近は作詞も楽しい。


《くーちゃんのお菓子大好き!!》

《うん。多分、桜和さんが作ってくれるからかも》


「わかりました。やってみます」


 自信はない。だからこそ、やろうと思った。

 作詞を評価されるのはもちろん嬉しい。だけど、それ以上に自分が作ったお菓子を好きだと言ってもらえることがどうしようもないほど嬉しい。


「自分なりに精一杯頑張ります」


 入選できなくても、きっと自信につながると思う。


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