1−4話:空side
お家に帰り、私はすぐに晩御飯の準備をした。お父さんもお母さんも仕事が忙しくてあまり家には帰ってこない。帰ってきたとしても、深夜とかで、いまの時間帯に一緒に食べるということはここ数ヶ月はなかった。
「いただきます」
お姉ちゃんも、大学とかバイトで忙しくて帰りが遅い。だから、夕食はいつも一人。
食事を終え、お風呂を済ませ、学校の家庭科室を借りて作ったカップケーキをもぐもぐしながらテレビを見て、寝るまでの時間を潰した。
「ただいまぁー。はぁ、お腹すいたぁ」
22時頃、お姉ちゃんがご帰宅。今日はバイトの日だったようで、随分お疲れだ。
「おかえり」
「お、美味しそうなの食べてるね。一口ちょうだい」
私は食べかけのカップケーキをお姉ちゃんに差し出した。特に気にした様子もなく、お姉ちゃんはカプッと一口食べると、すっごく幸せそうな顔をする。なんだかそれがすごく嬉しい。
「ご飯、すぐに食べる?」
「うん、可愛い妹の愛情ご飯食べるー」
「うっ、お姉ちゃん苦しい……」
と、もがいていると目の前にチラシを差し出された。
それは、お姉ちゃんが高校時代からバイトをしているライブハウスで行われるイベントの宣伝ポスターだった。
「例の女の子も出るらしいよ」
じっとチラシを眺めていると、不意にお姉ちゃんが耳元でからかうようにそう言ってきた。私は反射的にお姉ちゃんの顔を見た。すっごくニヤニヤしていて、私は恥ずかしさで手にしていたチラシで顔を隠した。
「いやーごめんごめん。あ、空色もコーヒー飲む?」
「……砂糖とミルク」
「はいよー。とは言っても、あの子は特定のバンドに入ってるわけじゃないしね。今回はギターのサポート役だから、歌は歌わないらしいよ」
「……詳しいね」
「お願いしてるバンドのメンバーに知り合いがいてね」
バンド演奏。先輩の演奏を見るのは、初めて見たあのステージ以来になる。すっごく胸がドキドキする。歌わないのは少し残念だけど、それでもまた、ステージに立つ先輩が見れるだけで私は嬉しかった。
「ほい、珈琲。後これ、チケットね。友達誘って見においで」
差し出された二枚のチケットを受け取り、私はしばし考えた。友達、と言われて思いつくのは氷華ちゃんだけ。それ以外のクラスメイトや部活の人とは話はするけど、友達って言われるとなんかちょっと違う気がする。
「ちょっと電話してくる。ご飯は少し待ってて」
「ほーい」
私はスマホを手にして、そのまま廊下で氷華ちゃんに電話をして、ライブに誘った。
先輩からは聞いてなかったみたいで「聞いてないよー」と少し不機嫌だった。改めて話を戻して誘うと、おっけーをしてくれた。日時や集合場所は後日また話し合って決めようということになり、私は「おやすみ」と言って、そのまま通話を切った。
「ライブ、楽しみだな」
私は廊下で一人、ニヤニヤと思わず口元が緩んでしまった。