3−17話:雪 side
元々今日のお出かけは、特に目的とかはなかった。
食事が終わった後は、ブラブラと街の中を歩いていた。
ペットショップに寄った時に、お互いに猫が好きだということを知り、その後に寄った雑貨で、猫のキーホルダーをお揃いで買った。私が黒の赤いリボンをつけたもので、桜和さんが、白の青いリボンをつけたやつ。すっごく喜んでくれていて、なんだかとても嬉しかった。
「んー……新曲はこの前買っちゃったから、何か別のものはないかな……」
立ち寄った音楽ショップはそこそこ大きな場所。たまに学校帰りに寄ることもあって、好きな音楽作家やアーティストの曲を買ったり、少し離れた場所で楽器も売っているので弦を買ったりもする。
「何かいいものあった?」
CDをじっと見ている桜和さんに声をかけ、彼女が手に持っている物を覗き込む。
「Sの新曲?桜和さん、Sのファンなの?」
「いえ。その……父がこの曲のプロディースをしていて……」
「え、桜和さんのお父さんって、音楽プロデューサーなの!?」
「はい。本名ではないんですが“枝垂桜”という名前で」
「え!知ってるよ!すごい有名だよ!」
とても有名な音楽プロデューサーで、男性アーティストをプロデュースさせたら世界一。父も私も大ファンで、彼がプロデュースしたアーティストの曲はよく聴いている。
「部屋に何枚かCDあるんだ。お父さんとよく聴いてる」
「ありがとうございます。父に伝えておきますね。あ、でもこのことは内緒で……人にその……自慢して話すようなことではないので」
「わかった。内緒にしておくね」
けどまさか、あの枝垂桜さんの娘が桜和さんだったなんて意外……テレビにも何度か出たことあったけど、あまり似てない……いや、よく見たら……
「あ、あの先輩……ち、近いです」
「え、あぁ……ごめんね」
「い、いえ大丈夫です」
その後、楽器のコーナーの方に足を運んで商品に目を向ける。
新しい商品も入っていて、ちょっと欲しいなぁと思うものもいくつかあって、いつもよりも少し表情豊かになっていた。
それを隣で見ていた桜和さんがくすくす笑っていることに、私は気づかなかった。




