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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
3章:春過ぎて、来たる夏は彼女とともに
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3−16話:空 side

桜和おうかさん決まった?」

「あ、はい」

「すみませーん」


 先輩と一緒に来たお店は、最近できたパンケーキのお店。氷華ひょうかちゃんと「行きたいね」と話していたところだった。

 甘いものは当然だけど、モーニングやランチ、ディナー向けの甘くないものも置いている。


「私はアボカド&サーモンパンケーキ。桜和おうかさんは?」

「えっと、エッグベネディクトパンケーキで」

「以上でよろしいですか?」

「ドリンクは?頼む?」

「じゃあ、カプチーノで」

「私はコーヒーで」


 店員さんは注文を繰り返して確認を終えるとそのまま下がっていった。

 なんだろ……ちょっと緊張しちゃうな……


「お待たせしました」


 結局、料理が運ばれてくるまでお互い無言だった。うぅ……なんか申し訳ない……


「ごゆっくりどうぞ」

「わぁ……」

「わぁー、美味しそう」


 運ばれてきた料理に先輩は少し控えめなリアクション。私も少し抑え気味だったけど、きっと、目をすっごくキラキラ輝かせてると思う。


「いただきます」

「い、いただきます」


 本音を言えば甘い方に興味があったけど、今はどちらかと言えばこういったおかず系が食べたかった。甘い方は、今度氷華ちゃんと来た時に頼もう。

 初めてくるお店は緊張する。だから今日これたのはすっごく良かった。料理も美味しいし。


「そう言えば良かったの?甘い方じゃなく」

「え、あー……そっちは、今度氷華ちゃんと一緒に食べようかなって……元々一緒に行こうねって約束してたので」

「ふふっ、仲良いね。なんだか妬けちゃう」

「え、や、え?ど、どういう意味ですか?」


 言葉の意味が理解できなくて私はあたふたと戸惑う。その様子に先輩はくすくすと笑いながら、にっこりと優しい笑みを浮かべた。


「仲のいい後輩は桜和さんだけだから」


 どこか寂しそうな表情。どう返していいかわからなかった……気づいた時にはなぜか謝罪の言葉を口にしていた。なんで謝ったんだろう、私……


「私、同級生とは仲良いけど、1年と3年とは交流ないの。部活にも入ってないし、委員会でも。積極的に自分から絡みに行く方じゃないからね」

「部活の方々とは?」

「うん。だから、1年と3年で交流あるのは、軽音楽部だけかな。でも、最近自分の中で一番仲良いなって思うのは、妹の氷華と軽音楽部部員以外だと、桜和さんだと思ってる」


 正直そういってもらえて嬉しい。だって、数ヶ月前まではお互い交流なんてなかった。あの日、私が下駄箱に手紙を置かなかったら、いまの関係は成り立ってなかった。先輩とこんなにお話しして、お出かけして……こういってもらえるなんて……。


「だけどね、もっともーっと桜和さんとは仲良くなりたいな。なんて……」

「私も……」

「ん?」

「ちゃんと話せる人、氷華ちゃんしかいなくて……でも、最近先輩ともたくさんお話しする機会ができて……だからあの、えっと……」


 言葉がしどろもどろになってしまう。先輩イライラしてないかな……そんなことを思いながらちらりと視線を向けると、先輩は笑みを浮かべて私の言葉をちゃんと待ってくれていた。嫌な顔なんてしていない……


「私も、もっと先輩と仲良くなりたいです!」


 思わず大きな声が出てしまった。他のお客さんの視線が私たちの方に向けられる。

 思わず口元を抑えて、そのまま恥ずかしさで小さくなった。うぅ……恥ずかしい……


「ふふっ、ありがとう」


 そう言われた瞬間にぎゅっと胸の奥が苦しくなる。

 あぁ、本当にこの人は優しい、そして心の底から思う。




—————— 好きだなぁ


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