3−13話:雪 side
「意見が違うのは当たり前のことでしょ」
不意に口を挟んだのは意外なことに氷華だった。
いつの間にか注文したハンバーグは食べ終わっており、メニュー表のデザートの一覧を見ていた。
「何かを作る上で口論は当然ある。だったら、お互いが納得するまで言い合えばいい。何が譲れなくて、何ならいいのか。それをしっかり言葉にして相手に伝える。感覚じゃなくて、相手が納得する答えを」
そう言い終わると、氷華はボタンを押して店員さんを呼んだ。
なんというか、氷華の言葉に私も納得した。ホント、この子は凄い。たまにこうやって的確な言葉を口にする。ホント……頭が上がらないよ。
「私も、氷華に納得です。実際、この子と動画制作の時に色々お互いに意見出し合うんですけど、それで口論になることもあるんですよね」
「妥協せずに、納得しないことは「やだ」って言ってるもんね。あ、ベリーパンケーキひとつください」
人間に同じ人はいない。十人十色、意見が違うのは当然だ。だから、口論するのが悪いことではない。ただ、相手がどうして嫌なのか、その理由がわからない状態で、ただ一方的に拒絶するのがいけない。
「とりあえず、そこから改めませんか? えっと、意見の掘り下げみたいなの。
一方的にあれはダメ、これはダメ、じゃなくて」
メンバーみんなが顔を見合わせる。そして口々に「それはやらなかったね」「はぁ、高校生に言われるとか、情けなさすぎ」と言っていた。
「それじゃあ改めて話しますか」
「だね」
「はーい」
なんとか話がまとまったようで、私はホッと一息。その時、隣にいた桜和さんが小さな声で「お疲れ様です」と言ってくれた。
よく見ると桜和さんの料理の手は止まっていた。隣で、一緒になって聞いてくれていたのだろう。なんだか申し訳ないことしちゃったな。
「食べよっか」
「あ、はい」
カルボナーラはすっかり固まってしまっていて、少し食べずらかった。
「お待たせしました」
「わぁ〜、パンケーキ」




