表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
3章:春過ぎて、来たる夏は彼女とともに
33/146

3−12話:雪 side

「あっ! こっちこっち!」


 指定されたファミレスへと行くと、春歌はるかさんが手招きする姿が目に入った。

 ただ、その場の雰囲気はあまりいい物ではなかった。


「ほら、高校生たち来たんだから機嫌がなおしなよ」


 春歌さんのバンドは五人メンバーで、喧嘩してるのは顔を背けているお二方のようだ。お互いに、向かいの一番遠い席に座ってる。


「あ、テストお疲れさま。好きなもの頼んでいいよ」

「は、はい……」

「うん……」

「わぁー、何食べようかなぁ」


 氷華ひょうかはルンルンでメニューを見ていたけど、私と桜和おうかさんはなんというか、その場の雰囲気を気にしてしまう。なんかすごいところに来てしまった……


梨沙りさちゃん、ね?」

なずなも、いい加減機嫌直しなさいよ」


 他のメンバーが宥めるも、その、梨沙さんと薺さんはそっぽを向けたままだった。どっちも口を開かないし、話し合いをしたくてもできないって感じ。これは、進まないわけだ。


「お待たせしました。チーズインハンバーグのお客さま」

「あ、氷華の!」


 運ばれて来た料理。氷華は美味しそうに、というか幸せそうに食べていた。

 私は、隣の席の雰囲気のせいで、注文したカルボナーラがうまく喉を通らない……


「あ、あの……」

「ん?どうしたの?」

「私たちはなんで、その……呼ばれたんですか?」

「いい加減、話をまとめようと思ってね。ほら、メンバー内じゃまとまったりしないからさ……二人に来てもらったのよ」

「そう、なんですか……」


 ちらりと視線を他のメンバーに向けるが、特に変わった様子はない。相変わらず、二人が顔を背けて、二人が宥めるという構図。


 詳しい内容を春歌さんに聞くと、梨沙さんは”バンドだからかっこいい系がいい”と言っており、片や薺さんは”可愛い系の少し盛り上がるぐらいの曲がいい”と主張していた。他のメンバーは”両方を組み合わせたものがいいのでは”と結論付けたが、お二人は納得しなかった。


「私としても、できれば全員が納得したものほうがありがたいのですが……その、不満を持たれると……気分的に……」

「うん、わかってるよ。ごめんね雪凪せつな

「ほら二人とも。高校生ちゃん困ってるんだから、しっかり話し合おうよ」

「そんなこと言っても、私も薺も平行線なんだから仕方ないじゃん。言っとくけど、私は曲げる気ないから」

「薺も曲げる気はないから」


 またしても二人は顔を背ける。春歌さんも他のメンバーも、こうなってはお手上げなのか、深々とため息をこぼす。

 私もどうしていいか分からず、何かいい案がないかと俯いて考える。


「意見が違うのは当たり前のことでしょ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ