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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
3章:春過ぎて、来たる夏は彼女とともに
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3−8話:雪side

 その日も雨で、空はどんより曇ってて、降り続ける雨が風に吹かれて窓ガラスを叩いていた。

 文化祭の演奏練習のためにお邪魔している軽音楽部の部室。今は休憩中で、部員たちは後ろで楽しそうに会話をしているが、私は窓際に椅子を置いてぼんやりと外を眺めていた。

 こんな日だからグラウンドには運動部の姿はなく、誰もいないグラウンドのいたるところに水たまりができているのが見える。


「そういえば雪凪せつな、曲の方はどうなの?」

「……」

「雪凪?」

「……」

「おーい、聞いてますか?」

「え?あぁ何?」

「曲の進捗だよ。どんな感じ?」


 ぼーっとしてたせいで、愛華あいかの声が聞こえてなかった。二度目であろう問いかけは、ひどく不機嫌そうだった。申し訳ない……


「んー……まぁぼちぼちかな。あまり意識してラブソングとか作らないから、いつもより進みは悪い」

「雪凪にも苦手分野はあるのかー」

「でも、私楽しみです、雪凪先輩の曲」

「私も。特に今年から作った曲の歌詞とかいいよねぇ」


 他の部員たちも、新曲をすごく楽しみにしていた。ハードル上がるからあんまり楽しみにしないで欲しいなぁ……


「やっぱり、恋の曲といえば片想いですよね」

「えー、もう付き合ってる状態でしょ」

「曲調は、早すぎず、遅すぎずって感じだよね」


 ラブソングについて語る軽音楽部員たち。参考程度に話を聞きながら、私は苦笑いを浮かべる。

 実は、曲自体はなかなかうまくいっていない。

 春歌はるかさんたちの方も気になるが、愛華にもさっき言ったように意識してラブソングを作ったことがなかったから苦戦してる。どうしても、自分好みのカッコイイ系の曲になってしまっている。

 話を聞いてる感じ、カッコよすぎず、可愛すぎないって感じだと思うけど、そのいい感じのバランスがかなり難しい。


「それじゃあ練習再開しようか。雪凪はゆっくり曲作ってね。完成するまでは、他の曲を完璧に仕上げようね」


 軽音楽部の部長、すみれ先輩の指示の元、練習が再開される。

 ラブソング……恋……それをどう曲として形作ろうか。


桜和おうかさんは、好きな人とかいるのかな?)


 そんなことを考えながら、私は愛用のギターを手にして、メンバーの輪の中に入っていく。


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