3−7話:空side
「あー……お母さんのご飯美味しいー」
「ふふっ、喜んでもらえて嬉しいわ」
テーブルには久しぶりに見るお母さんの料理。一口食べればもう涙が出そうになるほど美味しい。
基本的にお母さんがいない時の料理は私が作ってるけど、お菓子以外の料理はまだまだ。やっぱりお母さんには敵わない。
「二人とも学校はどう?楽しい?」
「あたしはいつも通り。授業は退屈だけど、バイトとかバンド活動は楽しい」
「それはよかったわ。空ちゃんは?」
「わ、私も楽しいよ。お菓子作りもだし、友達とのおしゃべりも」
「それはよかったわ。空ちゃんは人見知りだから色々心配してたけど、その様子だと大丈夫そうね」
三人で食卓を囲みながらのたわいもない話。お母さんのお仕事のことだったり、私やお姉ちゃんの学校でのことだったり色々。お姉ちゃんに比べて、私は自分の気持ちを伝えるためにあたふたしながら話をしていたけど、お母さんは笑顔で頷きながらちゃんと話を聞いてくれる。と言うよりも、なんか涙目で嬉しそうにしてる。
「あー、美味しかったぁ!!空色のご飯もいいけど、やっぱりお母さんのご飯美味しいー」
女性同士での食事あるある。話してる間に、いつの間にか食事が終わっている。といった感じで、私たちも気づいたら食事を終えていた。
お母さんは台所で洗い物。手伝おうとしたけど、「今日ぐらいお母さんがするわよ」と言われてしまった。
なので、そのままソファーでのんびりしてるお姉ちゃんのそばに行った。
「ねぇお姉ちゃん」
「ん、どした?」
「えっと、今どう?その、バンド……先輩、お姉ちゃんたちの練習のことも考えて、なるべく早く曲を完成させたいって……まだかかりそう?」
「あー……うん、そうだね……まだ全然。梨沙と薺が揉めてるんだけどさ……お互い一歩も引かなくてさ」
まぁ梨沙さんと薺さんは確かに好きな音楽ジャンルもだいぶ違うからな……なんであの二人が同じバンドにいるんだろうと不思議に思うほど真逆。
「こっちが二人にお願いしてるからさ、早く考えをまとめないととは言ってる
んだけどね……ごめん」
「とりあえず、先輩には変わらずって伝えとくね」
「申し訳ない」
「いいよ。それと、先輩が学校の軽音楽部の人に頼まれて曲作ることになったから」
「そうなんだ。あぁ、雪凪に気ぃ使わせたなぁ……」
「ギターサポートと新曲作りを頼まれたってことしか知らない。私は作詞頼まれてるだけだし。一応、伝えおくね。考えが固まったら教えて。多分、お姉ちゃんたちが先に頼んだからそっち優先すると思うから」
「オッケー。その時はすぐに伝える」
とりあえず、お姉ちゃんの方でも先輩には伝えると言った。だけど、もう少し申し訳ないと言うか、悪いと思ってる態度を取ってほしい。私はともかく、先輩に迷惑がかかるんだから。
「お姉ちゃん……」
「ん?」
「あんまり先輩に迷惑かけないでね」
ムッとした顔で私がそういえば、しばらく私を見ていたお姉ちゃんは私の頭を撫でてきた。
「ごめん」




