3−5話:雪side
「んー……はぁ……」
「雪凪、ちょっといいかな」
午後の授業が終わって大きく背伸びをして一息をつく。特に六時間目の授業は眠かった。殆ど話を聞いて黒板に書いての作業だから眠気が何度も襲いかかってきた。
「ん、どうした?」
そして、さて帰るかと思っている時に声をかけられた。彼女は隣のクラスの愛華。一年の時は同じクラスで、軽音楽部に所属していて、よくイベントごとでの演奏でギターサポートを頼まれる。
「文化祭での軽音楽部の演奏、また雪凪にサポートお願いしたくて」
「あぁうん、いいよ。去年と同じ流れなら」
「助かるぅー!!」
去年も受けたし、特に断る理由もないからあっさりと引き受けた。演奏の南さんとことか、ほかのところからもサポート依頼はきていないし、練習はつきっきりでできそうだ。
「それとね、もう一つお願いがあるの」
「ん、何?」
「実は、新曲作って欲しくて……」
「新曲?」
「無理ならいいんだよ!!雪凪も色々忙しいだろうし」
慌てて愛華はそう付け加えた。まぁ確かに無理、といいたいところだけど、春歌さんに頼まれてる曲作りは手が止まってるし、暇といえば暇だし、少しずつ作る分には問題ない。
「うん、今は忙しくないしいいよ。すぐにはできないかもだけど」
「ホントに!!ありがとう雪凪ー!!」
「はいはい。お礼はしっかりもらいますから」
「もちろん!それでね、実は作って欲しい曲があってね」
「何?」
「ラブソング!!」
きゃー!と顔を赤くしながらそう言う愛華にたいし、わずかに私の口が引きつる。
「ラブ、ソング?」
「そう!せっかくの文化祭だし、青春っぽい曲がいいと思ってね。青春といえば”恋”!」
「そ、そうなんだ……」
「告白する子もいるだろうし、恋人同士で回る子もいるだろうしね」
うちの学校は女子校。校内での男性との接触は教師以外は全くない。だから、唯一異性が学校にくるのはこういった外部を招待するイベントごとだけ。
恋人を呼ぶ子、想い人を誘う子。そんな子達は普通に存在する。
「ダメ、かな?」
正直ラブソングは作ったことはない。結果的にそう言う曲になったりはするけど、意識的に作ったことは一度もない。恋、か……
「やったことないけど、それでもいいなら……」
「こっちはお願いしてる立場だし、文句は言わない!」
と、再び手を合わせて“お願い”と頼む愛華に「わかった」と承諾する。
自信はないけど、まぁやって見ないことには始まらない。歌詞は、桜和さんに聞いてみて、お願いできそうだったら頼もうかな。




