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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
3章:春過ぎて、来たる夏は彼女とともに
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3−4話:空side

静まり返る教室に響くチョークとシャーペンの走る音。時々教師の声が合いの手のように入る。

 私は黒板に書かれる内容を書きながら、真っ白なノートとにらめっこしていた。これは、今黒板に書かれている数学用のものじゃなくて、作詞用のノート。


(どう、言葉にしようかな……)


 お昼の出来事がまだ鮮明に頭の中に蘇って、額に熱を感じる。

 先輩が悪いわけじゃない。だけど、ひどく胸がドキドキして、なかなか授業に集中できない。


 授業の内容の書き写しをしながら、私は感じたことを取り敢えず書いていこう。何もしなければ、込み上がる感情量に耐えきれなくなって倒れそうだった。

 シャーペンを走らせる音はみんなと同じ。だけど、みんなとは違うことをノートに書いていく。


如月きさらぎさん。如月さん、起きなさい!」


 一番前の席に座っている氷華ひょうかちゃんは堂々と寝ていて先生に怒られている。もうこの光景も見慣れており、先生と氷華ちゃんのやり取りはクラスメイトの中ではある意味息抜きのようになっていた。


「うぅ……ふわぁ」

「あくびしないの。ほら、ここの問題解きなさい」

「えぇー」


 ちらりと氷華ちゃんの様子を見た後、私はまたノートに向かって書き綴っていく。

 口で気持ちを伝えるのは苦手だ。言えずに溜め込むのはひどく苦しくなる。伝えるために、吐き出すために、私は言葉をノートに綴っていく。


「はーい、それじゃあ今日はここまで」


 チャイムが鳴ると同時に、私は自分の中にある感情を全て書き出した。

 ノートいっぱいに書かれた言葉きもち


「日直、号令」

「きりーつ」


 日直の号令で、みんなと同じように立ち上がる。

 不意に窓の外を見ると、雨はいつの間にか止んでいて、薄くだったけど虹がかかっていた。


桜和おうかー、ちゃんと挨拶しろー」

「ふぇ!あ、す、すみません……」


 最後の最後で恥ずかしい思いをしてしまって、椅子に座った後はクラスメイトと目を合わせることができなかった。すっごい笑われちゃった……


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