表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
3章:春過ぎて、来たる夏は彼女とともに
23/146

3−2話:空side

みなさんこんにちは、空色くしなです。現在私はソワソワしてます。

 先ほど四時間目の授業が終わって、お昼休みになりました。そして、もうすぐ雪凪せつな先輩が来るのです!!どうしよう緊張する!!


「……くーちゃんさ……初めてでもないのになんで緊張してるの」


 ぼーっと私のことを見ていた氷華ひょうかちゃんが、首を傾げながら心底不思議そうにそう尋ねてきた。


「初めてじゃないけど、それでも緊張しちゃうの!」

ゆきねぇだから?」

「うん、そう!」


 これでもまだ、初めての時に比べたら落ち着いてる。初めて一緒に食べた時は、緊張で体はほとんど動かない。会話らしい会話もできない。お弁当もまともに食べられないと散々だった。うぅ……今思い出すとかなり恥ずかしい!


「何度味わっても……好きな人と一緒っていうのは緊張するものだよ」

「氷華はよくわかんないけど、そういうもんなんだね」


 のほほんとしながらそういう氷華ちゃん。というより、私のことよりもお弁当の方に夢中だ。いつの間にかもう食べ終わっちゃってるし……ホント、氷華ちゃんは欲望に素直だな……こういうところは素直に尊敬する。


「失礼します」


 開けられていた扉から声が聞こえて、胸がどきりとする。もう何度も聞いた、先輩の声。振り返った先には、お弁当を持った先輩が手を振りながらこちらにやって来る。あぁやばい。すっごいドキドキする。


「あ、雪ねぇ」

「氷華、あんたさっきの授業寝てたんだって?」

「ハッ!なぜそのことを……」

「さっき廊下で宮田みやた先生に聞いた」

「うぅ〜、だって古典わかんないんだもん」

「古典に限らないでしょ、あんたの場合は」


 と、目の前で繰り広げられる如月きさらぎ姉妹のやりとり。先輩に頭を叩かれる氷華ちゃんを見て“いいな”なんて思ってしまった。


 不意に、先輩と目が会う。収まっていたドキドキがまた込み上がってきて、心臓を掴まれるような息苦しさを感じてしまう。

 そのせいか、まるで金魚のように口をパクパクさせてしまう。何を話そう。何か言わなくちゃ……

 そんなことを考えていると、氷華ちゃんがガッツポーズをしてきた。目から「頑張れ」と言っているのがわかり、私は何度か深呼吸をする。

 不思議そうにしている先輩の前に、私は家庭科の授業で作ったお菓子を差し出す。


「こ、これ!授業で作ったので、よ、よかったら先輩、どっ、どうぞ」

桜和おうかさんが作ったやつ?」

「は、はい!」

「ありがとう。大事に食べるね」


 もう死んでもいいと思えるほど、十分に嬉しい言葉。あまりの嬉しさに涙が流れそうになって顔を覆った。


「氷華は?」

「食べた」

「うん、知ってた。ちゃっかりお弁当も食べ終わってるし。待てもできないのかね君は」

「ヒエムス以下というわけです」

「こらこら否定しなさいよ」


 という会話が聞こえてくるけど、いまはそれよりも嬉しさでお腹いっぱい……食欲ではないです。幸福欲です。


「桜和さん、ご飯食べよう」

「雪ねぇちょーだい」

「もうあんたは食べたでしょうが」


 優しい声。私の大好きな声が私に向けられている。それだけで、私は幸せだった。


「はい。私も、氷華ちゃん見てたらお腹減っちゃいました」

「きゃー、くーちゃんに食べられちゃうー」

「へっ!そ、そういう意味じゃないよぉ〜!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ