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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
2章:手にした水桜の彼女
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2−10話:雪side

「わぁー……すごいたくさん」


 お姉さんに連れてこられた自室には沢山のCD、数本のギターが飾られていた。そして、鳥籠の中で言葉を話している鳥。九官鳥、だっけ?


「コンニチハ!コンニチハ!」

「こんにちは」

「九官鳥のきゅーちゃんよ。すっごく頭がいいの。……はい」


 そう言って渡されたヘッドホン。起動されたパソコンに繋がれたそれを耳につけて、私は数曲ほどお姉さんたちの演奏を聴いた。

 思っていたよりも色々なジャンルを演奏してるので、こっちで決めるよりも、バンド内で曲のイメージというか、曲調とか決めた方がいいかも。


「曲は、バンド内で曲調を決めた方がいいですね。結構色々やってますから」

「だよね……メンバーで好みが違うからなぁ……」

「とりあえず何曲かざっとですけど作ってみますね。曲調は今まで演奏したことあるものに少し似せますね」

「助かる。ありがとう」

「タスカル!アリガトウ!」


 鳥籠の中で、きゅーちゃんが羽をバタバタさせながらお姉さんと同じ言葉を繰り返す。その様子に思わずクスッと笑ってしまう。


「せっかく二人っきりになったし、妹たちの前ではできない話でもしようか」

「え、できない話ですか?」

「そうそう。姉の苦労だったりとかね。あ、もちろんバンドの話とかも。雪凪せつなは何がきっかけでバンドを始めたの?」

「えっと、きっかけは幼い頃に……」


 何だろう……確かに同じ姉同士なのに、私なんかよりもよっぽど大人。まぁ大学生だから、高校生の私よりも大人っぽいのは当然だけど、何というか……お姉ちゃんがいたらこんな感じなのかなって思ってしまう。

 普段は氷華ひょうかに姉として色々注意したり接したりしていたけど、思い返してみると、その行動の一つ一つが幼い子供が必死に大人になろうとしている動きに思えて恥ずかしくなる。


「それから空色くしなのことなんだけど」

「え?」


 急に挙げられた名前に私は驚いた。だけど、お姉さんはニヤッと笑みを浮かべて、腰掛けていたベットから立ち上がり、私の前まで来ると耳元でこう囁いた。


「歌詞を、ただの歌詞として受け取った?」


 お姉さんが私にどんな答えを求めているかわからない。何でそんな質問をしたのかわからない。だけど、私は私なりにしっかりと答える。


「ちゃんと伝わってます」


 送られてきた歌詞はただの言葉じゃない。桜和おうかさんの心そのものだ。


「そっか……うん、今日呼んでよかった」

「えっと、お姉さん?」

春歌はるか

「へ?」

「お姉さんじゃなくて、名前でいいよ」


 ニコッと笑みを浮かべて部屋の扉を開き、「そろそろ下に戻ろうか」と言ってそのまま先に部屋を出て行った。

 しばしその場で呆然としていたが、何だかすごく嬉しくなって私はその後を追った。


「春歌さん、よかったら今度セッションしませんか?」

「お、いいね。何弾こうか」


 多分この嬉しいって感情、こうやって頼れて、話の合う、姉のような存在だと感じたからかもしれない。


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