2−8話:雪side
「「……………」」
向かい合わせのソファーに腰を下ろし、出入り口に近い方に私たち如月姉妹。その反対側に桜和姉妹が座っている状態。
そして、今私たち姉妹の視線はテーブルの上に注がれている。
「ねぇ、くーちゃん」
「ん?」
「パーティーでもするの?」
テーブルにはたくさんのケーキ。私は何事かと不思議に思っていたけど、我が妹は普通に聞くからな。まぁ空気をよむべき時はちゃんとよむけど。
「ぇ、あ、その……こ、これはですね……」
顔赤くしてもじもじする桜和さん。すっごく可愛い……。
「ごめんね。この子、朝からそわそわしちゃって」
「お、お姉ちゃん!」
「気持ちを落ち着かせる時、お菓子作ったりするからいっぱい作っちゃうのよ」
「氷華は知ってたよ。もぐもぐ……くーちゃんのお菓子美味しいから、もっと作っていいけど」
遠慮なくお菓子をすでに食べている氷華。この子は友達の家でも容赦がないな。まぁでも、確かに桜和さんのお菓子は私も好きだから、もし余ったらもらって帰りたい。
「いただきます」
私はパウンドケーキに手を伸ばした。いまの季節にぴったりのいちご味。うん、相変わらず美味しい。それに生地にもだけど、少しだけ果肉が入っていてそれがまたいい。
「すっごく美味しい」
心からの感想を言えば、桜和さんは嬉しそうな顔をして「ありがとうございます」と勢いよく頭を下げた。その様子もなんだか可愛くて、思わず笑ってしまった。
「ショートケーキももらっていいかな」
「あ、はい。すぐに切り分けますね」
「あっ、氷華も欲しい」
なんだかんだお茶会のような形になってしまった。お菓子を食べながら雑談。二人の時はそこまで話が広がらなかったけど、氷華のフォローというか、話の付け足しとかがあったおかげで結構盛り上がった。
桜和さんの隣にいるお姉さんは、そんな私たちの様子を、紅茶を飲みながら微笑ましそうに見つめていた。氷華や桜和さんのやりとりならなんとなくわかるけど、私も混じってる様子は微笑ましいのだろうか……?
「あ、あの……」
「ん?」
「今日は、どういった御用で……」
元々ここに来たのは、桜和さんから“姉が会いたがってる”ということだった。
「んー……話してみたかったから」
年上らしい笑みを浮かべてきて、思わず声が漏れてしまう。氷華から桜和さんのお姉さんが大学生だとは聞いていた。確かに、すっごく大人っぽいし、なんだかカッコいい……。
「よくさ、うちのライブハウスで演奏してるし」
「え……?」
「ほらこの前。南たちのバンドのサポートで演奏した時のライブハウス。あそこのスタッフだったの」
「そうだったんですか!」
まさかお姉さんがあそこのスタッフさんだったなんて。しかも、南さんと知り合い。すごい偶然だ。
「お姉さんもバンドやってるんですか?」
「うん。えっと、雪凪だっけ。と同じでギターやってる」
「そうなんですね」
なんだかすっごい親近感が湧いて、話が盛り上がる。
なんだろう、お互いに妹がいて、バンドで同じギターをやっていて、場所は違うけどライブハウスのスタッフをしている。お姉さんとはすごく話があう。というか共感できる。
「そう言えば、雪凪の作った曲聴いたよ。いやぁー、ギターの技術もそうだけど、作曲の才能もあって羨ましいよ」
「そ、そんな。私はまだまだで……」
やっぱり褒められるのはまだ少し照れてしまう。思わず謙遜したけど、内心はすっごく嬉しかった。
「で、そんな雪凪に聞きたいんだけど」
「はい?」
「今って忙しかったりする?勉強とかバイト、作曲活動とか」
「えっと……特には……」
急な依頼とかもないし、今はサポートのお願いもないので、勉強したり作曲したりするぐらい。バイトもそこまで忙しくもない。
「急で申し訳ないんだけど、空色と一緒に一曲作って欲しい」
「んぐっ!」
ちょうど口に入れたパウンドケーキを飲み込もうとした時にそう言われて、驚いた拍子に変な器官に入ってしまって、私は激しく咳き込んだ。




