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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
2章:手にした水桜の彼女
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2−7話:空side

 朝から落ち着かない。

 昨晩はドキドキしすぎて、逆に疲れてぐっすり眠ってしまったけど、朝になってまたドキドキソワソワしてしまって、どうしても落ち着かない。

 

 今日は先輩が来る(氷華ひょうかちゃんも来るけど……)。私の家に、あの雪凪せつな先輩がきちゃう。

 お姉ちゃんが呼ぶように言ったからだけど、どんな形でも先輩が来るって事がすっごく嬉しいし落ち着かない。


「んー……空色くしな

「えっ! な、何?」

「作りすぎ」


 気持ちを落ち着かせようとするとき、私はいつもお菓子作りをするけど、いつも作りすぎてしまう。今日もそうだ。パーティーをするわけでもないのに、食べ切れるかもわからないほどのお菓子を作ってしまっている。


「少しは落ち着いたら」

「そ、そんなこと言われても先輩が来るんだよぉ……落ち着けるわけない!」


 まだ心臓はばくばくしていて、唸り声をあげてしまう。

 いや、今更ながらこんなにお菓子作って先輩にドン引きされないだろうか……氷華ちゃんは大喜びしそうだけど……余ったら、先輩にお裾分けしようかな。


「んーっ。美味しい」

「あっ!勝手に食べないで!」

「こんなにあるんだからいいでしょ。あー、珈琲飲みたくなってきた」

「……飲みたいなら自分で淹れてよ」

「ケチだなぁ」


 ムッとするお姉ちゃんを横目で見ながら、私は今作ってるケーキ作りを再開した。12センチぐらいのショートケーキ。クリームたっぷりで私は大好き。

 あっ、先輩ショートケーキ好きかな?私の好みで作ったけど、チーズケーキとかガトーショコラの方が好きだったらどうしよう。


ピーンポーン


「ひっ!」


 ちょうど油断しているときにインターホンがなった。びくりと体が反射的に反応して、クリームが変なふうに絞り出されてしまった。すっごいブサイクな形。

 って、そんなこと言ってる場合じゃない。多分先輩たちが来たんだ。どうしよう、お迎えいかないと。でも、ケーキまだ途中だし……でもでも!

 

「私が出て来るよ」


 あわあわしている私の姿を見かねて、作ったクッキーをボリボリとまたつまみ食いしながらお姉ちゃんが玄関へと向かった。

 さも当然のようにつまみ食いして部屋を出ていったお姉ちゃんにポカンとしていると、なんだか気持ちが少しだけ落ち着いた気がした。

 

 小さな声だけど、玄関から声が聞こえる。氷華ちゃんと先輩の声。

 とりあえず、ショートケーキを完成させないと。クリームを絞って、へたをカットしたイチゴをのせる。シンプルな見た目だけど、家で食べるには十分だろう。


 完成したケーキ。そして他のお菓子もテーブルに並べ終えた時、リビングの扉が開いた。


「来たよ」

「おっ邪魔しまーす」


 お姉ちゃんの後ろから、言葉の元気さとは裏腹に、ゆったりとした声で入って来て、その後ろから雪凪先輩がリビングへと入って来た。


「い、いらっしゃいませ!」


 込み上がる感情をぐっと抑え、わずかにあたふたしながらそう口にした。大丈夫かな、上ずったりしなかったかな……変に思われなかったかな……。


「お邪魔します」


 にっこりと笑みを浮かべて、先輩はそう答えてくれた。


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