5−40話:雪 side
「私の方も開けてみて」
「あ、はい」
自分が贈ったものが喜ばれて嬉しかったのか、私が贈ったものを手に持ったままだった。
少し慌てて包装を剥がして、箱からそれを取り出した。
「わ……綺麗」
帰り道にたまたま雑貨屋で見つけた猫のスノードーム。空色も猫が好きだし、喜んでくれたらな。って思ってたけど
「あ、猫が入ってます!かわいいい!」
予想以上に喜んでくれたみたいでよかった。もし渡して「家で開けてね」なんて言ってたらこんな顔をまじかで見ることはできなかっただろう。
何はともあれ一安心。もし送ったものを失敗していたらと思うと、不安でたまらなかった。
「……あの、先輩」
「ん、どうした?」
「……実は!その……デート中、私考え事してたんです……」
ぎゅっと、送ったスノードームを強く握る。彼女がどんなに強く握って壊れることはないだろうけど、その行動に少しだけ不安を感じる。
空色は話してくれた心の中に抱いていたモヤモヤとした感情。それを聞いて、あぁこの子も同じ事を考えていたんだなってそう思った。
「それで……私時は……」
「空色でいいんじゃなくて、空色がいいんだよ」
例え空色が男でも私が好きになったのは空色。性別なんて関係ない。たまたま好きになった相手が女の子だっただけ。それ以上でもそれ以下でもない。シンプルな答えだ。
「だから、そんな泣きそうな顔しないで。私は、後悔なんてしてない。間違えないなんて思ってない。私が抱いているこの感情はちゃんと”愛している”だよ」
そっと、彼女の頬に触れて口づけをする。
外はもう随分暗くなっているから、外から私たちがキスをしている姿は見えない。いや、例え見えていても気にはならない。
周りのこと以上に、目の前の彼女が愛おしくてたまらないのだから。
ゆっくりと唇が離れて、じっと相手の顔を見つめる。
「そういえばしたことなかったね」
恋人になって随分経つのに、キスもしたことなかったなんておかしな話だ。だけど、今ちゃんとしたから。初めては卒業。これからはたくさんしたいな。
でも、そう思うと急に恥ずかしく感じてしまった。空色も同じ気持ちだったようで、顔を赤くして俯いていた。
(普通の恋人たちはこれを平然としてるんだからすごいよな)
初めてとはいえ、胸がドキドキする。空色の反応も見ていると、私たちはたまにでいいかもしれない。ハグとか、手を繋ぐだけでも十分嬉しいし。
「空色……」
「は、はい……」
「ふふっ、好きだよ」
「……私も、大好きです」
お互いに愛を囁きあったのは、とても下手だったけど、観覧車のゴンドラが天辺に到着した時だった。




