5−32話:雪 side
「お疲れ様です」
すれ違うスタッフさんに挨拶をしながら、空色を連れて控え室にやってきた。
このライブは春歌さんのバイト先だけど、まだきていないのか、すれ違うスタッフの中にはいなかった。
ノックをせずに、いつものように扉を開くと、随分となかは賑わっていた。
というよりも、何事?って思うぐらいになんか不思議な光景だった。
大泣きする圭人さん。
そんな圭人さんを慰める春樹さん。
どうしていいかわからなくてあたふたする胡桃さん。
大笑いする南さん
「あ、ヤッホー雪凪」
私が入ってきたことの気づいた南さんは、必死に笑いを抑えながら私に挨拶をしてくれた。
状況がわからない私は、南さんに何があったのかを尋ねた。
「いやね、圭人の友達が今日ライブを見にくるんだって」
「いいことじゃないですか」
「それが、デートのプランとしてライブに来たからショックを受けてるの」
南さんはまたお腹を抱えて笑い出した。
笑いながら、南さんは付け加えるように「彼女とのイチャイチャの道具にされるのが気に食わないんだって」と言った。どう反応していいのか分からず、私はただ苦笑いを浮かべる。
「あれ。雪凪、その子は?」
不意に、圭人さんを慰めていた春樹さんが私のそばにいた空色に気づいて尋ねていた。
完全に人見知りモードに入ってる空色は、私の後ろに隠れて、ぎゅっと服をつかんでいた。
可愛いな……
「えっと、その……紹介しますね。桜和空色。私の恋人です」
やっぱり、まだ恥ずかしさがある。恋人、というときにちょっと言葉が止まりかけてしまった。
「おぉーそうなんだ。前に話してた子?」
「あ、はい」
「そっか。あ、春樹って言います。よろしく」
「ぇ、あ……は、はい。よ、よろ……よろしく、お、ねがっ……します」
「うん、よろしく」
予想以上に春樹さんは普通に接してくれた。そういえば、いつか話した同性同士で付き合う話も、春樹さんは普通に受け入れていた気がする。
だけど、当然春樹さんのように受け取る人しかいないわけじゃない。
春樹さん以外の三人は、びっくりした顔で私たちの方を見ていたから。




