5−28話:雪 side
「はい、氷華」
「わぁ。雪ねぇありがとう」
クリスマスイヴ当日。今日は、家族と一緒に過ごして家でそれなりのクリスマスパーティーを開いた。
一人一人に準備したプレゼンを手渡していく。もちろん、ヒエムスにも。
「ほわぁ!高くて買えなかった画材だ!!」
「ありがとね、あったかいのう」
「ありがとな雪凪」
「いいえ。私もいいものもらったし、おあいこだよ」
家族楽しく、と言いたいけどこの場に母だけがいない。
母は今日と明日、クリスマスなど関係なしに仕事になった。
なので、仕事が終わったら家族全員でいたわってあげようという話になってる。母の好きなご飯を作って、母にマッサージしたりとか色々。
「雪ねぇどうしよう!天使!天使がいるよぉ」
「氷華おちつきなよ」
「そういう雪ねぇも連写してるじゃん!」
今日は特別な人いうことでヒエムスも家の中に入れているのだが……霜汰と仲良くしてる姿があまりにも可愛くて、氷華と一緒に連写してる。
氷華も表情はいつも通りなんだけど、言葉にいつも以上の感情がこもっている。
姉二人の心を射止めるとは……恐るべき末っ子。大きくなった時に、姉二人からひたすらに幼い頃エピソードを聞かされるだろう。ごめん霜汰、今のうちに謝っておくよ。
「いい、霜汰。よーく聞くんだよ」
「うぅ?」
テーブルいっぱいにあった料理はなくなり、食後のケーキも一瞬でなくなった。
私はおばあちゃんと一緒に洗い物を。お父さんはコーヒーを飲みながらクリスマスに放送されてる音楽番組を見ていて、氷華は霜汰の面倒を見ている。
ちなみにヒエムスは霜汰の後ろでぐっすり眠っている。
「サンタさんはいないの。わかった?」
「う?」
「氷華ー、まだ幼い弟に夢のないことを教えるんじゃない」
「大丈夫だよお父さん。霜汰も氷華たちと一緒ですぐに気づくから」
「まったくうちの娘は……少しは空想に夢持てよな」
「サンタは無理だよ」
本当に両親には申し訳なく思う。
私も氷華も、小学校低学年にはサンタが存在しないことを知った。
私はまぁ結構ショックだったけど、氷華は今と同じような表情で「サンタさんって不法侵入者なんだね」とか言って、母に誕生日プレゼントでスタンガンをねだったほどだった。
「後はやっておくから、お風呂に入っておいで」
「あ、うん。氷華ー」
「んー?」
「久々に4人で入ろっか」
濡れた手を拭きながらそう提案すると、氷華の目が輝いた。
4人。正確には3人と1匹である。




