5−27話:空 side
(やっぱり、ヤキモチ妬くのは重いかな……)
HRはあっという間に終わり、私はそのまま部室に向かっていた。
その途中、体育館でのことを私は悩んでいた。
先輩はいろんな人と仲がいい。ちょっとしたことでヤキモチを妬く行為は、やっぱりどう考えても重いと思う。もっと心を広く持たないと。先輩に嫌われたくないもん。
「可愛い顔してるね」
「ひゃ!」
急にぷにっとほっぺを突かれ、しかも耳元で声が聞こえて思わず声を上げてしまった。
振り返った先にはなんだか楽しそうに笑ってる顔があった。
「せ、先輩……」
「部室に行くところ?」
「あ、はい。先輩は帰られるんですか?」
このまま先輩と会わないで冬休みを迎えると思ったけど、まさか会えるなんて……どうしよう……にやけちゃいそう。
両手で口元を隠しながら少しだけうつむき気味になった瞬間、先輩が勢いよく抱きしめてきた。
「ふぇ!?せ、先輩!?」
あまりに突然のことで私の頭が追いつかない。というか、ほかの生徒がすごい見てる!は、恥ずかしい!
「あ、あの先輩……こ、ここ……」
「空色はあったかいね。ふわふわだぁ」
止めようとしたけど、楽しそうにそんなことを言われたらもう何も言えなくなった。だって、恥ずかしい以上に嬉しいの方が圧倒的に勝っていたから。
とりあえず、先輩の気がすむまでおとなしくしてよう。
そう思ったのが間違えだった。
「他の子に抱きついたり抱きつかれてて、やきもち妬いちゃった」
「っ!」
耳元で突然そんなことを言われて、私の顔は真っ赤になると同時に心臓が止まりそうになった。
もしかして先輩も私の方を見てた!?
「せ、先輩!わ、私は!」
「それじゃあ、私帰るね」
パッとそのまま先輩は体を話し、いたずらっ子のような笑顔を浮かべる。
「部活頑張ってね」
ひらひらと手を振り、そのまま自分のクラスの下駄箱へと向かう。
ただ呆然とその場に立ちつくことしかできなかったけど、遅れてさっきの言葉を思い出した。
——— 他の子に抱きついたり抱きつかれてて、やきもち妬いちゃった
「せ、先輩もヤキモチ妬いてくれたんだ!」
人目も気にせず、私はその場で喜んだ。
当然、通り過ぎる生徒からは変な目で見られてしまったけど、あまりの嬉しさに全く気づかなかった。




