5−26話:空 side
「えー、であるからして」
時間はあっという間に過ぎて、今日は二学期の終業式。
夏の時とは違って、今度は冬ということで体育館は寒くて、生徒たちは前の生徒にすがるようにして座っていた。
「うぅー……寒ぃー」
「ちょっ!どこ触って……」
「ほっこりぃ」
先生たちは咎めたりしなくて、むしろその様子にくすくすと笑みを浮かべていた。
「はぁ……あったかい……」
「よかった。私結構体温高いよ」
「空色ちゃんもあったかーい」
私も寒くて前の子に許可をもらってくっついている。もちろん後ろの子にも抱きしめられているから、サンドイッチの具のように挟まれている状態。すごく暖かい。
(氷華ちゃん、大丈夫かな?)
ちらりと、私よりも少し離れた前の方に座っている氷華ちゃんに目を向ける。
前の子を勢いよく抱きしめていて、そんな姿に後ろの子があたふたしてる。
前に、冬生まれだけの寒いのは苦手だと言っていた。
その話を先輩にしたら、家族で一番の寒がりだと笑って話していた。
(……先輩も、同じようにしてるのかな……?)
先輩のことを思い出した瞬間、頭の中に疑問が浮かぶ。
当たり前のように、前の子を抱きしめたり、抱きしめられてるこれだけど……普通は女の子同士のスキンシップみたいなもの。だけど……恋人が自分じゃない相手にしてる、されてると思うと、心がもやもやする。
(嫉妬、かな……)
先輩が聞いたら喜んでくれると思うけど、私は自分の心の狭さを感じるからあまり抱きたくはなかった。
まだ続いている先生の言葉を聴きながら、視線を上級生の方に向ける。
上級生は、すっかりこの寒さにも慣れているようで、私たちみたいに抱きしめあってる生徒はいなかった。
そのかわりなのか、随分とタイツを履いている生徒が多い気がした。寒さ対策かな?
たくさんいる上級生の中から先輩を探す。見つけた先輩は、近くの同級生と何かを話していた。
その様子を見て少しだけホッとした。よかった、ほかの人に抱き付いてなかった。
「これで、終業式を終了します」
長い長い終業式がやっとお終わり、私たちは暖かな教室を目指す。
渡り廊下を吹き抜ける冷たい風が体にあたり、私たちはお互いを温めながら移動する。




