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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
2章:手にした水桜の彼女
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2−5話:空side

 あの後、私は先輩と一緒に帰った。緊張や、今更ながら下駄箱に手紙を入れていたことがバレてしまったというなんとも気まずい感じで、会話は全くなかった。

 先輩は電車通学。私は徒歩通学なので、駅まで先輩を見送った。

 駅までの道のり、会話お互いに喋ることはなく。このまま、今日の出来事が夢で終わってしまうのではないかと思った。改札を潜ろうとする先輩の背中を見つめると、なんだか泣きそうになった。

 だけど、「またね」と振り返って先輩が笑顔でそう言ってくれた。言葉を返そうとしたが、電車がきた音がして、先輩は慌ててホームへと走って行った。


 気づいたら家についていた。

 道中の記憶がなくて、気づいた時にはリビングのソファーの上で、枕を抱きしめてた。


《みつけた》

桜和おうかさんがいいなって思ったから》


 思い出すだけで胸が苦しくなる。

 嬉しかった。言葉自体は、普通だったら大したものじゃない。だけど、私はその言葉が何より嬉しい。

 話しかけることすらできなくて、隠れながら先輩との見えない繋がりを築いていた。だから先輩が私をみつけてくれて、私がいいと言ってくれたのが、すごくすごく嬉しかった。


「またお話しできるかな……」


 もっと先輩とお話ししたい。一緒にいたい。

 人って、好きな人と関わりを持つと、こんなにも我儘になっちゃうんだ……。


「ただいまぁ」


 時計の針が3時を指した頃、お姉ちゃんが帰ってきた。どんどん近づく足音を聞きながら、カレンダーの方に目を向ける。


【バイトなし。授業も早めに終わる】


 と、赤いペンでそう書かれていた。


「ただいまぁ〜空色くしなぁー」

「おかえり。お昼は?」

「食べてきたよぉ〜……ん?」


 不意に、私の顔を覗き込んできたお姉ちゃんが、なんだか不思議そうな顔をした。私はお姉ちゃんの顔が近距離にあること、その表情が私の心を覗き込んでいるように思えて、びくりと肩が上がってしまう。


「何かいいことでもあった?」


 案の定、見透かされてしまった。こうなっては、お姉ちゃんに隠し事なんてできない。人に改めて話すのはちょっと恥ずかしかったけど、私は今日の出来事をお姉ちゃんに話した。

 驚いたけど嬉しかったこと。泣いちゃったこと。いろんな話をした。特に会話の途中途中で、お姉ちゃんが割って話すことはない。隣で相槌を打ちながら、最後まで私の話を聞いてくれた。


「そっか。よかったじゃん」

「うん。でも……もし今日だけだったらどうしようって思っちゃう。明日からお休みだし、学校始まって声かけて、“えっと……”みたいな反応されたら、私泣く……」

「いやー、乙女だね」


 なんて呑気にお姉ちゃんはいうけど、私は気が気ではない。

 だって、大好きな先輩にそんな反応されたり、嫌われたり、正体がわかったからもう手紙は送らないで。なんて言われたら私辛い!もう学校いけない!


「なら、明日呼んでよ」

「ん?」

「その先輩ちゃん。明日うちに呼んでよ」


 笑みを浮かべながらいうお姉ちゃんに対し、私はその発言の意味をすぐには理解できなかった。

 呼ぶ?誰を?先輩を、うちに呼ぶ?


「ええええええええええええええええええええええええ!」


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