5−20話:空 side
「先輩、どうぞ」
家に着くまで、先輩と色々お話しした。基本的に昨日の体育祭のこと。
いつも通りの先輩。だけど、繋いでいる手には力がこもってた……。
そうだよね……やっぱり、緊張するよね……昨日、お父さんに話したとき、私すごく怖かった。怒られるかと思った。だけど、話し終えた後「明日、如月さんを家に招きなさい」それだけしか言わなかった。どういうことか聞こうとしたけど、話は本当にそれで終わりだった。
今日、何を言われるのかはわからない。もしかしたら「別れなさい」。そう言われるかもしれない。
先輩の両親が普通に受け入れてくれたから、私の両親もって勝手に期待を抱いていた。でも、きっとあの反応は特別なのかもしれない。ホントは……
「お邪魔します……」
緊張した様子で深々と頭を下げる先輩。
家に着いて、私はそのまま一緒にリビングへと行った。
家には両親と私達だけ。お姉ちゃんは今日はバイトで家にはいない。
「いらっしゃい。さぁ、こっちに座って」
「あ、はい!」
少しだけ動きがぎこちない。こんな先輩初めてだから、思わず笑いそうになってしまった。流石に今の状況でそんなことも出来ないから、すぐに口元を手で隠した。
「そんなに緊張しないで。あ、お菓子食べる?今日ね、空色が色々作ったの」
「あ、はい。い、いただきます」
私も一緒に、先輩の隣に腰を下ろす。
お母さんはフレンドリーに、ニコニコと笑って対応してるけど、隣にいるお父さんは今だ黙ってるだけ。それが、逆に先輩にプレッシャーを与える。
「あ、空色。戸棚にある紅茶を入れてくれる。オレンジの香りがするのよあれ」
「わかった。4人分で大丈夫?」
「えぇ、お願いね」
お母さんに頼まれて、紅茶を入れる。初めてみる紅茶だから、うまく淹れられるか少し不安だ。
「…………」
お湯を沸かしている間、チラチラとリビングの方に視線を向ける。
「まぁそうなの?」
「はい。それで……」
先輩とお母さんは、お母さんのリードもあってか、楽しく話してる。けどお父さんは、相変わらず一言も喋らない。流石に、私もちょっと怖い。
「あ、そうだ空色。そのお茶淹れ方が特殊だからちょっと教えるわね」
「え、あぁうん」
そう言って、お母さんが私のところにくる。
え、ってことはお父さんと先輩の二人っきり!?
「お、お母さん……!ね、ねぇ……」
「大丈夫よ」
にっこりと笑うお母さん。もしかして、わざと二人っきりにした?
お母さんがどうしてそんなことを言ったのかはわからない。それを信じないわけじゃやにけど、不安であることには変わらない。
「だと、いいな……」




