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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
5章:秋離れ、彼女と感じる冬の熱
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5−12話:雪 side

「んじゃ、ゆきねぇ」

「行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい」


食事を終えた後、私は二人と別れた。

午後が最初の競技は部活対抗リレー。部活に所属してる生徒は全員参加する必要がある。

メインはリレーではあるけど、最初に行進があるのでは知らない生徒も強制的に参加しないといけない。

私は部活に入ってないから、ブロック席でそれを見るだけ。


「さて、私も席の方に行こうかな」

雪凪せつな


不意に誰かが私に声をかけて振り返った。

そこにいたのは、私に手をふる春歌はるかさんの姿だった。


「春歌さん。見にこられてたんですか?」

「うん。いやー、借り物競走はすごかったね」

「あ、はは……まぁ何と無く察して……」


そうじゃなくても、私に声をかけるのは勇気がいるだろうし。結果的にあぁいう事はしていただろう。


「春歌の知り合い?」


春歌さんと話をしていた時、後ろにいた男女がゆっくりと私たちの元にやってきた。

気づいていなかったわけじゃない。だって、二人は有名人。


「うん。さっきの借り物競走で空色くしなをお姫様抱っこしてた子」

「あぁさっきの。あれはすごく良かったわ。お父さんなんて、すごい連写してたわ」

「ん、んー!ま、まぁ思わず……」


私は少し戸惑いながら挨拶をする。

よくテレビに出ている空色のお母さん。

テレビこそ出ていないが、雑誌でよく取り上げられる空色のお父さん。特にこの人は、私も、お父さんも大ファン。会えてとっても嬉しい。


「あ、あの……」

「ん?」

「ご、ご迷惑でなければ、あ、握手を……」


恐る恐るという感じで手を出す。

言葉足らずだったみたいで、付け足すように春歌さんが「お父さんのファンなんだよ」と言ってくれた。それで理解してくれたらしく、私の手を取ってくれた。感激だ!


「お父さんいいなぁ。私も握手」

「あ、はい!ありがとうございます」


羨ましかったらしく、空色のお母さんも私と握手してくれた。

こっちもこっちで感激だ。嬉しいな。


「遠くからじゃわからなかったけど、とても美人さんね」

「え、そ、そんなことありません」


やっぱり二人の両親だけあって顔がすごい整ってる。美男美女夫婦って感じで、なんていうか、見られてると思うと恥ずかしくなってしまう。

少しだけ、あたふたと柄にもなく動揺してしまう。


「ねぇ雪凪」

「あ、はい」


不意に春歌さんに声をかけられて振り返ろうとした時、それよりも先に

耳打ちをされた。

それは、現状、目を背けて、あえて隠していたことだった。


「言わなくていいの?」


詳しく言わなくてもなんのことかはすぐにわかった。

視線をご両親の方に向けると、不思議そうにこっちを見ていた。

春歌さんがこういうってことは、きっと空色も両親にはいっていないのだろう。なんだか、そう思うと怖く感じる。


『午後の競技開始、10分前です。生徒の皆さんはグラウンドに集まってください』


放送部のアナウンスが鳴る。このまま言わずにさってもいいけど、きっとこういうチャンスはもうないと思う。


「あ、あの……」


あぁ、やっぱり怖い。なんで、こんなに怖いんだろう。男女だったら、こんなことはないのかな……女の子同士だから、こんなに怖いのかな……。

グッと奥歯を噛み締め、私は意を決して言葉を口にする。


「私、空色……娘さんとお付き合いしてます」


一瞬何を言われたのかわからず、ご両親は驚いた表情をする。当然だ、女の子に突然、娘と付き合ってると言われたんだから。


「あ、雪凪!そろそろ始まるよ!」


少し離れたところからクラスメイトが私に声をかけたきた。


「うん!すみません、私はそろそろ失礼します、。ご挨拶ができて良かったです」


深々と頭を下げて、私はクラスメイトとともに、ブロック席に戻った。


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