5−10話:空 side
『位置について、よーい……ドンッ!』
高らかに鳴り響くピストルと共に、借り物競走に参加している生徒が一斉に走り出す。
お題が置かれてるテーブルまではそれなりに距離がある。まずはそこまで急いで走らないといけない。
「はぁ、はぁ、はぁ」
だけど、本当に悔しいけど、私は走るのが苦手。参加者の中では一番最後にお題のテーブルにたどり着いた。その時点でもうすごく息が上がってる。
「え、えっと……お題は」
最後に残ったお題の紙を開く。
だけどその内容を見て私は一瞬石化した。だ、だって内容が……顔が赤くなる。正直このお題は恥ずかしい。でも、このままじゃゴールできない。
手にしてた紙を握りしめて、私は自分のブロックへと走った。
「雪凪先輩!」
恥ずかしさを必死に殺しながら、先輩の名前を呼んだ。
きっといろんな人が私のことを見てる。
そう思うと目を開けられないし、顔をあげらない。
「そのまま目、瞑ってて」
「え……」
ふわっと体が浮く感覚がした。同時に、悲鳴に似た大きな歓声なものが上がった。
びっくりして思わず目を開けてしまい、すごい近い距離に先輩の顔があった。
「あ、目開けちゃダメって言ったのに」
状況がわからない。今、私はどうなってるの?
『おーっと!まさかの”お姫様抱っこ”!生徒の歓声が止まらない!』
「え、へ?」
「こっちの方が早いでしょ」
あの時と同じように、いたずらっ子のような笑みを浮かべて先輩は走り出した。
先輩本当に足が早い最後に紙をとった私が、あっという間に一番でゴールをした。
「ふー。走った走った」
「あ、あの先輩……」
「ん?」
「あ、ありがとうございます」
「……いいえ。というか、むしろ呼んでくれて嬉しかった」
ポンっ、と頭に手を置かれる。
あぁ、本当に胸がドキドキする。
「1位ゴールおめでとうございます。お題を拝見してもいいですか?」
「あ、はい」
担当の人に手にしていた紙を渡しす。すると、じーっと内容を見た後、本部席の方に向いて、なぜか親指を立てた。
『担当者からのオッケーが出ました!文句なしのゴールです!』
また歓声が上がる。というか、お題の内容見られて、問題ないって思われたってことは……。
「えー、本当にこの内容入れてたの?」
「定番じゃん」
いつの間にか、先輩も私が引いた紙を覗き込んでた。しかも、担当の人とは知り合いみたいで普通に話してた。
「いやー、いいもの見せてもらったよ。まさか雪凪の後輩ちゃんに当たるとは思ってなかったけど」
「来年は入れないでよね」
「それは来年次第で。さぁさぁお二人さん、1位の旗だよ」
担当者さんに渡された、一位の旗がついた棒を握る。
まさか自分が何かの競技でこれを手にする日が来るなんて思ったなかった。なんか感動……
「おめでとう、空色」
「……はい」
恥ずかしかったけど、先輩を選んで良かった。




