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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
2章:手にした水桜の彼女
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2−3話:空side

「で、あるからして。学生は……」


 GW前日の全校集会。膝を抱えて、ステージ上で話をしている理事長先生の長期休みの注意事項などの内容を頑張って聞いていた。後ろにいる氷華ひょうかちゃんは熟睡していて、私の背中に頭を押し付けて寝ていた。

 まぁ氷華ちゃん、基本的に授業中とかも寝てるから……特に話ばかりの教科は。

 私も理事長先生には申し訳ないが、段々話の内容が耳に入らなくなってきた。


(あ、先輩だ……)


 ふと、二年生の方に目を向けると、雪凪せつな先輩の姿があった。

 顔を上げて話を聞いてはいたが、すっごくウトウトして眠そうだった。なんだかんだやっぱり姉妹だなって、思わず笑ってしまいそうになっていた。


(先輩、喜んでくれたかな……)


 膝に顔を埋めながらあの日の放課後のことを思い出した。

 突然先輩が家庭科室にきて、お話しして……思い出すだけでも胸がドキドキして顔が赤くなっちゃう。私、変なこと言ってなかったかな!!

 

(逃げるように教室出ちゃったけど……怒ったり、してないかな……)


 嬉しい反面、そんな不安もあった。私は先輩と二人でいるだけで胸がすっごくドキドキする。あの時は突然だったか、本当にアレ以上一緒にいるのは精神的にきつかった。


(次、もし話す機会があったら、その時ちゃんと謝ろう)


 そんなことを考えているうちに、全校集会は終わった。

 拍手の音で、寝ぼけながら起きる氷華ちゃんに「終わったよ」といえば、大きな欠伸を一つ。


 今日の授業は午前中だけ。部活も今日はお休みだけど、試してみたいお菓子もあるし、先生に頼んでまた教室を借りようかな。


「くーちゃん帰らないの?」

「うん。ちょっと用事あるから。氷華ちゃんは?」

「部活ぅ〜。今日ね、屋上でお空描くの」

「そっか、できたら見せてね」

「うん。じゃあね、くーちゃん」


 手を振りながら、教室を出て行く氷華ちゃんを見送った。

 私はそのまま職員室で家庭科室の使用許可をもらい、簡単に作れるお菓子を作って時間を潰した。

 元々今日は、先輩の下駄箱に新しい詩を入れようと思っていた。だけど、まだ人も多い時間帯だし、誰かに入れてるところを見られるかもしれない。とりあえず、お菓子を作り終わったら下駄箱に入れに帰ろう。


「んー……パンケーキって実は作ったことないんだよね」


 もしかしたら、先輩はもう帰ってるかもしれない。明日からはGW。先輩は帰宅部だから学校には来ない。そうなると見つけるのは休み明けになる。


「まぁ、早く見て欲しいけど……仕方ないよね。それに、なんというか……少しは気持ちの余裕ができるから問題なし!」


 家庭科室で一人、パンケーキを作ってお昼ご飯を食べる。ふわふわモチモチで、味はシンプルにシロップとバター。うん、我ながらうまくできた。すっごく美味しい。


「今度は、フルーツのソースとかかけて食べてみたいな。生クリーム乗せたり」


 授業が終わって一時間以上がたった。

 学校に残ってるのは部活をしている生徒だけで、朝と比べればだいぶ人の数も少なくなった。


「……よし、誰もいない」


 キョロキョロと周りを見渡し、私はコソコソと下駄箱へと向かう。

 先輩の下駄箱は、私の身長よりも一つ上の高さにある。

 カバンから手紙を取り出し、先輩の下駄箱を開けて中に入れようとした。


パシッ!


「へ?」


 不意に、誰かに手首を掴まれた。あまりに突然のことで、口から変な声が出てしまった。

 反射的に私はすぐに横を振り返った。


「あぁそっか」

「え……」


 振り返ったそこにいたのは、少しだけ息を荒げながら、だけど笑顔を浮かべる、雪凪先輩の姿だった。


「みつけた」


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