5−4話:空 side
遠くなっていく先輩の背中。
私の手の中には先輩のハンカチがある。どうしよう……すっごいドキドキする。あとでちゃんと返さないと。いや、持って帰って綺麗に選択してから渡したほうがいいよね。
「くーちゃん」
「え。な、なに?」
ぼーっと先輩のことを見つめていれば、氷華ちゃんに呼ばれてやっと私の視野が広がる。
「大丈夫?」
「う、うん。平気」
手に持っていた先輩のハンカチをポケットにしまって、絵の塗りを手伝う。
氷華ちゃんの指示に従って塗りを無心でやるけど、不意に先輩に拭かれた感触を思い出して無意識に触れてしまう。
「くーちゃんニヤニヤしてるぅ」
「っ!それは氷華ちゃんでしょ!」
「えー」
不満げな顔をする氷華ちゃんのことなど気にせず、私は片手で口元を抑えながら塗りをする。だって、恥ずかしいんだもん。
「ふふっ、くーちゃんは雪ねぇのこと大好きだね」
「……氷華ちゃんは意地悪だよね」
「えー、氷華は意地悪してないよー」
「わかってて言ってるなら、同じだからね」
本当に氷華ちゃんは多くは語らず、だけどわかったような感じで話すから本当にタチが悪い。絶対私をからかって楽しんでる!
「からかわないで!」
「いたた……くーちゃん叩かないでー」
ムッとした顔をしながら、私は何度も氷華ちゃんの方を叩いた。
だって、痛がってないんだもん。すっごい顔がニヤニヤしてる。やっぱり私のことからかってる。




