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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
4章:夏は溶け、秋空に歌う彼女の恋
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4−44話:空 side

ゆきねぇ、くーちゃん起きたよぉ」

「あ、おはよう空色くしな


リビングには、台所で料理をする先輩の姿があった。

エプロン姿の先輩って、新鮮かも……かっこいいなぁ……


「あれ、おばあちゃんは?」

「ご飯食べて、さっき散歩に行ったよ。あ、もうすぐできるから座って待ってて」

「はーい」


氷華ひょうかちゃんはそのままソファーの方に行って、テレビをみはじめる。

私は何か手伝えることはないだろうかと先輩の所に行こうと思って、霜汰そうた君を氷華ちゃんの隣に座らせようとしたけど、「ん」と言いながら離してくれなかった。仕方なく、抱きかかえたまま先輩の方へと向かった。


「おはよう空色」

「おはようございます」

「あはは、すっかり霜汰は空色のことを気に入ったみたいだね」


私に抱えられている霜汰君の頭を撫でる先輩。

何だろう……なんだかこれって、夫婦っていうか……家族っていうか……


「あ、あの!」

「んっ、どうした?」

「何か手伝いましょうか?」

「大丈夫だよ。座って待ってて」

「くーちゃん、こっちきて一緒にテレビ見よう」


少し遠く、ソファーに座る氷華ちゃんに呼ばれる。

あたふたしていると、先輩に「行っておいで」と背中を押される。

一瞬先輩の顔を見ると、にっこりと笑みを浮かべる。その笑顔をみると、昨夜のことを思い出す。

少し恥ずかしくなって、そのまま氷華ちゃんの隣に座って、霜汰くんと一緒に遊んだ。

とは言っても、足元で遊んでる霜汰君を見守るって感じかな。たまにこっちに視線を向けるからそれに返してあげるって感じ。

隣に氷華ちゃんが「たまに構ってあげるだけで大丈夫だよ。大人しいから」と言っていたのでそうしている。

時々、チラチラと先輩の様子を伺う。やっぱり、何か手伝いたいな……


「できたよー」


ぼんやりとそんなことを考えていると、先輩がそう声をかけてきて、私は現実世界に引き戻された。

氷華ちゃんはすぐに先輩の手伝いに向かい、テーブルに料理を並べて行く。私も手伝おうとしたけど、霜汰くんを置いて行く事も出来ず、そのまま大人しくソファーに座っていた。何だか申し訳ないな。


「どうぞ召し上がれ」


テーブルに並べられた朝食。

そういえば先輩の手料理って初めてかもしれない。普段は私が作ったお菓子を先輩が食べてくれているけど、逆はなかった気がする……


「いただきます」


一口、先輩の作ってくださった朝食を食べる。


「ん、美味しい」

「よかった。味付けはどう?」

「すごく好きな味です」


何だか、こんなに落ち着く朝は初めてな気がする。

大好きな先輩の顔を朝から見れるのももちろんだけど、だれかとこうやってご飯を食べるのも。


(平和だな)


そう思いながら、私は用意してもらった朝食を食べ進めていった。



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