4−41話:空 side
深夜。みんなが夢の中に入っている時間帯、私はベットの上で横になっているけど、なかなか寝付けないでいた。
先輩のベットの上は、私だけじゃなくて当然先輩も一緒に寝ている。恥ずかしくてお互いに背中を向けている状態だけど、やっぱり先輩がすぐ側に……一緒に寝てるってだけで心臓がバクバクして寝れない……。
「はぁ……ちょっとトイレに行こう」
ぐっすり寝ている先輩を起こさないようにベットから降りて、部屋を出る。
足音もなるべく立てないようにしながら階段を降りて、ここに来た時に教えてもらったトイレに行こうとした。
「ん?」
だけど、なぜか少しだけ廊下に光が差し込んでいた。
少しだけ開いたリギングの扉。誰かいるのかな……
そう思いながら、足音をなるべく立てないように、ゆっくりと扉の中の様子を覗いた。
「よしよし、霜汰。大丈夫だからね」
そこにいたのは先輩のお母さん。抱きかかえてるのはまだ幼い、先輩の弟君だった。確か、霜汰君だったかな。
この状況……もしかして霜汰君が夜泣きしちゃって、先輩のお母さんが宥めてるのかな。
「……あー、あー」
そんな様子をぼんやりと眺めていると、抱かれていた霜汰君止めがあって、私の方に手を伸ばして来た。
「あらあら、どうしたの霜汰」
息子の向いている方に、先輩のお母さんも向くと、私と目があった。
私はただただアワアワしながらどうしようか戸惑った。別に覗くつもりはなかったし、ど、どうしよう……
すると、先輩のお母さんは私に手招きをする。入っておいでってことかな?
少しだけ戸惑いながら私は部屋の中に入って、ソファーの上に腰掛けた。
「眠れない?」
「あ、はい。その……」
「ふふっ。まぁ人の家ではなかなか寝付けないわよね」
クスクス笑うお母さんは、やっぱり先輩に似ている。あ、違うな。先輩がお母さんに似ているのか。
「じゃあ、おばさんと少しお話をしましょうか」
「あ、はい。私でよければ」
会話の内容はたわいない物。
学校での氷華ちゃんのことや先輩のこと。
私が知ってる範囲の話を、先輩たちのお母さんに話した。
抱きかかえられている霜汰君はすっかり眠っていて、私は楽しくお話をした。騒がない程度に。
「そっかぁ。二人とも楽しそうで良かった。私の仕事が仕事だから、二人には色々迷惑かけてるからね」
「そんなことは……」
「でもねー……霜汰の面倒に家のこと。おばあちゃんがいるとは言っても、子供に任せるのは申し訳ない」
きっと先輩たちはそんなこと思ってないけど、親側からしたら申し訳ないとかやっぱり思ってるんだ。
私も、両親の仕事柄、お姉ちゃんと二人の時もあれば一人の時もある。
小さい頃は寂しかったけど、今はそんなことないし、仕方がないことだって思う。
「あの……」
先輩たちの代わり、ではないけど……私もある意味同じ立場だから、私の意見になっちゃうけど、少しは気持ちが伝わればいいな。
「子供は大人が思ってる以上にしっかりしてますよ」
笑顔で私が答えれば、目を見開くように驚かれたけどすぐに笑顔になって「ありがとう」と言ってくれた。
その笑顔は、どこか先輩の笑顔を思い出させるものだったから、恥ずかしくなって俯いてしまった。
「そ、それじゃあ私はこれで失礼します」
「うん、お話ししてくれてありがとう」
私は少しだけ胸をドキドキさせながら、先輩が眠っているベットへと戻った。




