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歌詞(こころ)から掬いあげる言葉(きもち)  作者: 暁紅桜
1章:春、送られてくる彼女の心
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1−1話:雪side

 春を迎え、私、如月きさらぎ雪凪せつなは高校二年生になった。

 一年の時とはクラスのメンバーも変わり、ほとんどが初めましての状態。だけどまぁ、同じクラスだった子もいるし、女子校ということもあってすぐにクラスメイトたちとは仲良くなれた。


 そんな新学期が始まって数週間、最近ちょっと奇妙なことが起きるようになった。

 HRが終わり、帰宅部の私は特に学校に残ってもやることがないから、いつも通りまっすぐ家に帰ろうと思った。

 ギターケースを背負い、階段を降りて、昇降口で上履きから靴に履き替えようと下駄箱の扉を開く。そして、私の目にそれが止まる。

 


「今日もあった」



 靴の上に置かれた私宛の手紙。ラブレターではない。ここ女子校だし……。まぁでも、付き合ってる子達はいるみたい。よく手を繋いだり、前はキスしてるところも見たかな。


 手紙の内容は“歌詞”だった。

 

 私の父は、音楽鑑賞が趣味でいろいろな楽曲を聴いて、私も一緒になってよく聴いていた。そんな父が、幼い私をロックフェスに連れて行ってくれた。人が多くて、迷子になりかけたり、人酔いしかけたりしたのを今でも覚えてる。だけど、そんなあまり良くない思い出以上に私が目をキラキラと輝かせたのが、父に肩車してもらって見た、ステージでのバンド演奏だった。


 その日の景色に影響、憧れて、私は音楽活動を始めた。

 ギターの弾き方、曲の作り方を一から独学で勉強した。初めて作った曲を褒められた時は本当に嬉しかった。だけど、曲は作れても作詞の方がてんでダメで、音源だけをずっと提供していた。だけどこの詩が送られてくるようになってからは、絵が得意な妹に協力してもらって、ネット上にちゃんと歌声のついた曲をあげれるようになり、たくさんの人が私の曲を聴いてくれた。


 送り主の名前は書かれていない。代わりに書かれているのは、水色の桜マーク。私は密かに【水色の桜】と呼んでいた。



「今回のもいいなぁ」



 送られてくる詩はどれも素敵で、最初はただ「いいなぁ」と感心するだけだった。だけど、何度も歌詞を受け取るうちに少し違和感を感じた。

 最初はそれが何かはわからなかった。だけど、歌詞を読むに従って、その中から送り主の心が見えるようになった。

 楽しい感情、悲しい感情、怒った感情。作詞家の心の声が、歌詞を通じて私に伝わってくる。



「どんな人かな……」



 密かに、私はこの【水色の桜】を探していた。

 どんな人かな?うちの生徒?それとも誰かの身内?なんで詩を送ってくれるのか。

 頭の中でこの人のことばかり考えている。少し、気持ち悪いなと自分で自分を卑下してしまう。

 

 私が今抱いているこの感情を言葉にするならなんというのだろうか。



「会えたら、なんて言おうかな」



 そんな日が来るかもわからない、不確定な未来のことを想像しながら、私は手紙を鞄にしまい、早く作曲したいなと胸を踊らせながら家へと帰った。


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