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にゃんにゃん冒険隊 [事件解決!]  作者: みらい
第一章 爽やかな風と共に
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第七話 魔法の言葉で

“お空へ…行った?”

「子猫ちゃん…」

ミケは、思わずそう声をあげる。

その様子を見ていたマロとモモも、「子猫ちゃん…子猫ちゃん。」

そう、ずっと、ずっと、心配そうに言った。


陽湖が心配そうに返事を待っていることに気づいた成田は、無理やり笑顔を作って「子猫はこちらで、楽にしてますよ。」

と、隣の部屋に向かって案内した。



部屋の中には大きな診察台があり、その上にタオルに包まれた子猫達がいた。

「子猫ちゃん…」

ミケ達は、子猫のいる診察台に飛び乗って、優しく声をかけた。


しかし、子猫達から返事はなく、体は冷えて、身動き一つしない。

三匹は、「子猫ちゃん…」と、何回も何回も繰り返し、そう言った。



そんな、居た堪れない空気の中、慌てた様子の看護婦が、部屋に飛び込んで来た。

「成田先生!急患です!」

「えっ、分かりました、今行きます!」

成田先生は、「すみません、子猫達の様子を少しこちらで見ていてください、すぐ戻ってきます」と言い、看護婦に大きな声で返事をした。

どうやら、他の動物も来たみたいだ。


三匹は、子猫を見守りながら、黙って様子を伺っていた。

すると、一匹の老犬が運ばれているのが見えた。

「ごまちゃん、ごまちゃん!」

「おい、ごましお!」

老犬とともに、“聞き覚えのある”声が聞こえた。


「えっ!ごま爺!?」

三匹は、運ばれているごま爺に驚き、ついていった。

その中でも、一番悲しそうに声を上げたのはマロだった。


三匹は、子猫とごま爺のことで、頭がいっぱいになった。

「ごま爺、どうしちゃったのかなぁ…」

「入ったらダメだよ」と追い出されたため、病室のドアの前をうろうろと落ち着きなく、歩き回わっていた。

それに気づいたのか、春子と秀夫は「あ!ミケちゃん達!」と、驚いて声をあげた。

そう言われて、ミケ達も春子と秀夫のことに気づいた。

マロは、「ごま爺に何かあったんだ!」と思い、急いで話をかけた。

「ごま爺は!?大丈夫なの?」

マロが、いくらそう聞いても、返事は返ってこなかった。



少しして、ドアが開いた。

三匹は急いでごましおの元へと駆けつけた。


「ごま爺…?」

話しをかけても返事は返ってこない。

マロは諦めずに、何回も何回も繰り返しそう言った。

それを見ていたミケとモモも、声をかけた。

「大丈夫?」

ミケとモモは、息ぴったりでそう言った。

いつもなら「クスッ」っと笑うはずだが、そんな場合ではなかった。


すると、マロはボロボロと涙を流し始めた。

「ごま爺…『またいつか会おうね』って言ったじゃん…

 『一緒にドッグフード食べよう』って言ったじゃん…」

マロが、言葉を詰まらせながらもそう言った。

それを聞いて、ミケとモモも一緒に涙を流し始めた。

「ごま爺…」

ミケとモモも、とても心配そうに言った。


その時、ごま爺を診察していた成田先生が

「ごましおくんは寿命…ですかね…。愛護センターでも働いていて、……きっと…疲れも溜まったのでしょう…。」

そう言った。

「先生、そんな簡単に諦めんといて…」

「ほうよ…わしら家族なんじゃ…まだ諦めてなーけー…な?」

春子と秀夫は、涙を流しながら、そう言った。

そう言うと、空気は数秒しーんとした。


「はい…そうですよね…。獣医の僕が一番に諦めたらダメですよね」

成田先生は、下を向いて静かにそう呟いた。

三匹は静かに、それを聞いていた。

マロは、こくこくと頷きながら、涙を拭いている。


先生は、「ヨシッ!」と、気合いを入れて、両手で自分のほっぺたを叩いた。

「春子さん、秀夫さん。すみませんでした。

 ごましおくんの年齢を考えると、つい弱気になってしまいました。

 これから治療を始めますので、諦めず見守ってください。」

先生は、二人の方を向き頭を下げた。


「先生、お願いします…」

先生に、思いが通じた二人は安堵し、頭を下げた。


「では、治療を始めます。

 美咲ちゃん、点滴の準備を、あと水分補給用の水と、体を温めるタオルを用意して!」

と、看護婦に指示を出し、治療用の白衣に着替え、マスクをつけた。

看護婦さんは、「はい」と返事をして、テキパキと準備を始めた。


「春子さん、秀夫さん、ごましおくんに声をかけてあげてください。

 猫ちゃんたちも、応援してあげて」

先生は、みんなにもそう言って指示を出して治療を始めた。


先生と、看護婦さんは、まずは、弱った体に栄養を与える為、点滴を行い、さまざまな器具を使い検査をしていく。


「美咲ちゃん、バイタルチェックお願い」

「意識は…ありません

 脈拍…正常範囲です。

 血圧…異常無し。

 呼吸は安定しています。」



その間、春子と秀夫、三匹は、ごましおに声をかけ続けた。


「ごまちゃん、しっかり…また、美味しいご飯食べようね…」

「ごま、ガンバレ!今度、川へ散歩に連れてってやる…

 おまえ、水浴び好きじゃったろ…」

二人は、先生の邪魔にならない様に、気をつけながらも、ごましおの顔を見て必死に話しかける。


マロたちも「ごま爺、ごま爺〜、頑張って〜」と、泣きながら応援した。


その時だった。

「う…う……春子、秀夫…」

静かに眠ていたごましおが、「クゥーン」と、微かに声を出した。

「ごまちゃん!?」

「ごま!」

春子と秀夫はそう言ってごましおの頭をそっと撫でた。


「なんとか、峠は越えた様です。」

先生は、そう言って、マスクを外して「ふー」と、大きく息を吐いた。


(よかった、意識が戻ったみたい。)

ミケは、そう思いながらふと後ろに目を向けた。

「あっ子猫!」

ミケは、子猫のことを思い出し、ついつい大きな声で叫んでしまった。

「あ、本当だ!行こう!」

モモも、振り返り、そう言った。

「マロもおいで!」

モモは、そう言ってマロを呼んだが、マロは「僕は行かない、ごま爺と一緒にいる。」そう首を振りながら言った。

「え、でも…」

モモは、マロの方を見ながら呟いた。

「モモちゃん!ミケたちだけでも行こう!」

ミケは、大きな声でそう言いごましお達のいる病室を後にした。

「うん。」

モモも、そう頷いて、ミケについて行った。



(ここはどこじゃ?ん?春子さん、秀夫さん、なんで泣いとるんじゃ?

 んん!?それにアレはマロか?)


ごましおは、目を覚ましてあたりを見回した。


「よかったー、ごま爺目が覚めたんだね。」

マロが泣きそうな顔で、ごましおに話しかけた。

「おう、マロか。お前はなんでおるんじゃ?帰ったんじゃなかったか?それに、ここはどこじゃ?」

ごましおの問いに、マロが答えた。

「ここは病院だよ。

 ごま爺は倒れたみたいで、おばちゃんとおじちゃんに連れてきてもらったみたい。

 僕らは、帰る途中で子猫を見つけたんだけど、元気がなかったから、診てもらってるんだ。

 ミケ姉とモモは、ごま爺が目を覚ましたから、今子猫の様子を見に行ったよ。」

マロは、そう一つ一つ丁寧に言った。


ごましおは「そうか…」と呟き、みんなを見渡し、お礼を言う様に一声鳴いた。


「さて、マロや。お前さんも子猫のところにいってやりな。わしはもう大丈夫じゃ。」

ごましおの話に「えっ、でも…」と心配そうにマロがつぶやいた。


「わしは、これから先生にぶっとい注射を打ってもらうからの。アレを見て見ろ。」

ごましおは、先生の準備している注射の方に目をやりマロに言った。

マロは、注射器のあまりの大きさに「ゾッ」として、毛を逆立てた。


そんな様子を見たごましおは「はっはっは」と笑った。


「本当を言うと、少し疲れておるから休みたいんじゃ。

 わしには、春子さんと、秀夫さんがついとるから大丈夫じゃ。

 何かあったら声をかけるからの…」

ごましおはそう言って、大人しく先生に注射を打ってもらい、すうすうと寝息を立てて眠り始めた。


その様子を見たマロは、春子と秀夫に「よろしく」と、「ミャー」と一声かけて、子猫たちの所へ行くことにした。



「子猫ちゃん…」

「可哀想に…」

二匹は、動かなくなった子猫たちを見て、目を潤ませながら呟く。

「…何か…何か、モモたちに出来ることないのかな…」

モモは、涙を拭いながらそう言った。

「うーん…じゃあ、『魔法の言葉』はどう?」

ミケは、モモ方を向いてそう言った。

「『魔法の言葉』?」

モモは、首を傾げながらミケに聞いてみた。

「モモちゃん、『魔法の言葉』は心の声、自分の心の想いを声にして、子猫ちゃんに送るの。」

ミケは、モモに笑って見せた。

「分かった!やってみる。」


二匹は、そう話して、子猫達の方を向いた。

いざ、魔法の言葉を………


「負けないで!」

「生きて!」

「頑張れっ!」


二匹は子猫を勇気付けたが、子猫に変化はなかった。


「魔法の言葉はみんなで心を合わせないと、意味がないんだ。

 私とモモちゃんだけじゃ足りないよ…」


ごましおの所から帰ってきたマロが、「僕も!」と言い、ミケ達の方に駆け寄った。

「マロくん、戻ってきたんだね!じゃあ、もう一回『魔法の言葉』、言ってみる?」

ミケは、マロとモモにそう聞いた。

「うん。」

「いくよ!せーのっ」



「先生、そんな簡単に諦めんといて…」

「ほうよ…わしら家族なんじゃ…まだ諦めてなーけー…な?」


「ごまちゃん、しっかり…また、美味しいご飯食べようね…」

「ごま、ガンバレ!今度、川の方へ散歩に連れてってやる…

 おまえ、水浴び好きじゃったろ…」



三匹は、二人の一生懸命の『魔法の言葉』を思い出した。

そうだ、みんな、必死なんだ。

みんなの幸せが一番なんだ。


「あなた達は、みんなにとって大事な一つの命、唯一無二の存在。大切な存在なんだよ。」

ミケは、そう優しげな声で魔法の言葉をかける。

「そうだよ。だから、あなた達が笑顔になると、私たちも笑顔になれるんだ。」

モモは、にっこりとした笑みで、魔法の言葉を言った。

「僕たちにとって、君達は、大切な宝物なんだよ!」

マロは、大切だと言うことを、必死に教えた。

「「「子猫ちゃん…大好きだよ!」」」

三匹は、とびっきりの笑顔でそう言った。


これで返事が返ってくるかもわからない、そんなわけないかもしれない。

でも、三匹は、あきらめずに希望をもって『魔法の言葉』を言った。

そんな三匹は、天使のように輝いていた。


「ミ…」

子猫達は、ミケ達の希望を無駄になんかしなかった。


ごましおの治療が終えた後、成田は急いで子猫の眠っている部屋に向かった。

すると、ミケ達の姿があった。

「すみません、遅れました」

陽湖は「ゴクン」と息を呑み、検査の結果を待つ。

「この子達は、ダニに噛まれています。」

「へ?」

「ダニ?」

マロとモモは、頭にクエスチョンマークを浮かべた。

「ダニはね、噛まれたら命にかかわるのよ。ミケの猫友達は、ダニに噛まれて亡くなってしまった子もいる。それに、子猫ちゃんたちはまだ産まれたばかりだから、もっと、もっと危険なの。」

ミケの丁寧な説明に、二匹は「そう…だったんだ…」と呟く。

「だから、子猫ちゃんたちが無事でよかった!」



よかった。気持ち伝わったよ。

気持ちに、答えてくれたよ。

気持ち、伝えてよかったなぁ。

「生きて」って必死に伝えて、よかったなぁ。

そうして一つ一つの命の実が、膨らんでくる…



「私達の気持ち、『魔法の言葉』伝わってよかったね!」

「気持ち、伝わったね!」

「子猫ちゃん達は、ちゃんと気持ちに応えてくれた!」

三匹は、そう言いあった。

そして、三匹は、子猫達に必ず言おうと思っていたことがあった。

「じゃあ、子猫ちゃんの隣へ行こう!」

ミケは、そう言って微笑んだ。

「うん!」

二匹は、元気な声でそう言いながら、子猫の方へ歩み寄った。


「子猫ちゃん…」

なるべくそっと、小さな声で三匹は声を揃えて言った。

「本当に本当に…」

三匹はそう言いながら、下を向いた。

「「「ありがとうっ!!」」」

そう言って、パッと顔を上げた。

その三匹の表情は、天使のように輝いていた。

「…ありがとう…」

まだ小さな声が、微かに聞こえた。


その時、ふと秀夫と春子が部屋を通りかかった。

「あら、春子さんに秀夫さん…?」

「よ…陽湖さん!?」

春子は、陽湖がいたことにびっくりした。

「三人は知り合いなのかな…?」

ミケは、首を傾げながらそう言った。


プルルルルルッ

プルルルルルッ

陽湖のポケットから音がした。

その音に気づいた陽湖は、急いでポケットの中から携帯を取り出し、「もしもーし、はーい。」

と話し始めた。

話しが終わったのか、そのままそっと、部屋を出て行ったが、すぐ戻って早口で、先生に話しかけた。

「成田先生、ちょっと急用で仕事に行ってきます、子猫ちゃんと、ミケ猫ちゃん、うちの猫ちゃんをちょっと預かって下さい!」とだけ言って、どこかに行ってしまった。


「ちょっ、ちょっと待ってよー!」

マロは慌ててそう言い、陽湖を追いかけて行った。

「あっマロ!」

モモも、そう言いマロについて行った。

「あ、ダメ!」

ミケはそう大きな声で言った後、すぐにマロとモモについて行った。

「あ!猫ちゃん!」

部屋から成田先生の声が聞こえるが、三匹は陽湖を追いかけることに夢中になっていた。


「え…ここ…どこ…!?」

マロは、そう言いながら急に足止まった。

三匹は病院の中を走り回ったおかげで、迷子になってしまった。

そこは、薄暗く、病院の裏口みたいなところだった。

「どうしたらいいの…?」

モモとミケは、そう少しぷるぷると震えながら心配そうに言った。

「どうしたらいいんだ…よぉぉぉぉぉぉぉ!!」

マロは、絶望した声でそう言った。

そして、マロは、ずるずるとしゃがみ込んだ。


「どうしよう…僕たち…ここで…」

マロは、しゃがみ込んだまま、心配そうな顔で言った。

「もうっ!マロったら〜。そんなこと言わないの!大丈夫、きっと誰かが来てくれるよ!」

モモは落ち込んだマロに声をかける。

「でも…どうする?」

マロは、モモのおかげで少し安心した様だ。

「とりあえず、誰かが助けに来るまで「助けて〜」って言って待ってる?」

ミケは、マロとモモに、そう言ってみた。

「え…え〜!?」

マロは、あの喉のことを思い出したのか、これまた絶望した声で言った。

「あ、あはは〜」

ミケは、「言わないほうが良かったかな…?」と思いながら、苦笑いをした。

「とりあえずここで安静にしてよう!」

モモは、そう言いながら、二匹にピタッとくっついた。

「そうだね。」

ミケも、うんうんと頷きながら、そう言い、マロは、とても嬉しそうに、「うんっ!」と頷いた。


「でも、ちょっと不安だな………」

マロとモモは息ぴったりでそう言った。

三匹は、顔を見合わせて、クスクスと笑った。


その時だった。

「マ……ん、モモ…ん」

聞き覚えのある声が聞こえた。

次回は出来たら投稿します。

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