第三話 あの子が危機
第三話を修正しました。
「モモー!どこにいるのー?」
「モモちゃーん!いるなら返事してー!」
マロは、キョロキョロと周りを見ながら、大きな声で呼びかけながら探した。
ミケは、狭い隙間をマロとなるべく離れないように見ていった。
「なかなか見つからないね…。」
「うん…どこに行ったんだろう…。」
ミケは、探すのは大変なことを改めて実感した。
マロは、心配そうに後ろを振り返ったり、辺りを見回したりしていた。
「探しても探しても見つからない…。」
二匹は、もう猫花畑全体を見回ったはずだ。
「こうしてみると、猫花畑って結構広いんだね〜」
「そうだね〜、お花にお水をやる人とか、掃除をする人とかすごく大変そう…。
改めて掃除をする人、お花にお水をやる人に感謝だね!」
ミケは、いつも猫花畑を綺麗にしているおばさんの顔を思い浮かべながらそう言った。
「これだけ広いとモモも迷子になるよね…
きっとモモは、綺麗なお花を探しに猫花畑の奥の方まで行ったんだよ!」
「そうかもね…。よし!マロくん!もっと奥まで探してみよう!」
ミケがそう言うと、マロは元気よく頷いて返事をした。
「うん!」
“絶対にあきらめないよっ!待っててね!モモちゃん!”
…
その頃、愛護センターでは。
「もう16時か、あと8時間でこの子たちも処分しなくちゃいけないのか…」
「気がすすまないな…」
愛護センターの職員の話し声が聞こえて来る。
「もう…だめかもしれない…」
モモは6日前に愛護センターに保護されていた。
一緒にいた猫や犬たちは、一週間経つとどこかへ連れて行かれ、帰ってこなくなってしまう事をモモは知っていた。
今日、モモもいつもの部屋から別の檻に連れて行かれたのだ。
「最後に飼い主さんとマロだけには会いたかったな…」
モモは諦めかけていた。
“最後に、家族には会いたかった…”
…
ミケ達がモモを探し始めて約1時間が経つと…。
「モモちゃん…!はぁ、喉が痛くなってきた…」
ミケは、「モモちゃん!モモちゃん!」と呼び続けたため、喉が痛くなってきた。
「モモ!…うぅ…もう大きな…声が…でない…よ…!」
マロも大きな声は出なくなってしまった。
「一旦休憩…する?」
ミケはこのままでは喉が痛くて声も出ないし、体力も使うばかりだと考えて、マロの方に振り返り向き、そう言った。
「うん…する」
いつも元気なマロも、疲れ果てた様子で答えた。
幸い近くに、人影がない広場がある事をミケは知っていた。
その広場には、夏の暑さも凌げる木陰もあり、近くには綺麗な小川が流れていて、『休憩するには持ってこい!』の落ち着く良い場所だった。
「ふわぁ〜。生き返る〜。」
マロは、木陰に飛び込み転がった。
「イテッ!」
どうやら、勢い余って、小石に頭をぶつけてしまったようだ。
ミケは、そんなマロを横目で見ながら木陰に入り、腰を下ろした。
草はとてもふわふわしてて、草のじゅうたんみたいだった。
…
一方愛護センターでは、時計の針は、17時を回っていた。
さっきまで話をしていた、職員達が動き出した。
“あきらめたくない”
「誰か…助けて!」
モモは、大きな声で何回も何回もそう叫んだ。
…
木陰で休憩し、小川の水で喉を潤したミケは、草の上で気持ちよさそうにゴロンと転げて、目を細めているマロに聞いた。
「ふぅ。だいぶ喉復活してきたし、モモちゃん探す?」
「そうだね!」
ミケの声に、マロは一気に起き上がる。
その瞬間、ミケは「はっ」気づいた。
これだけ探して見つからないなら、もしかして愛護センターに保護されたのかも…。
アレを聞かないと……。
「マロくん。モモちゃんって何日前から行方不明なの?」
ミケがそう聞くと、マロは難しそうな顔をしながらこう言った。
「えーっと……、えっと‥あ!今日入れて7日前!」
マロは、「思い出せた!」と嬉しそうな顔をしていた。
「あ…」
それを聞いてミケは、一気に顔が青ざめた。
「マロくん、急いで愛護センターに行こう…!」
ミケがそう悲しそうな顔で言うと、マロも察したのか、青ざめた顔になっていた。
「う…うん」
愛護センターまでは、ここから30分以上かかるはずだ。
「急いで行こう!」
二匹は、どちらからとは言わず声をかけ、駆け出していた。
…
モモは、1時間近く必死に叫んでいたが、誰も見向きはしなかった。
「どうしよう…もうすぐ殺処分がはじまっちゃう…
モモは…愛護センターで、人生の終わりを迎えるのかな………。」
モモは諦めかけていた…。
「やっと鳴きやんだか…喉が乾いたろうに、これを飲みな。」
すこしして職員の一人がやってきて、ミルクが入ったお皿をモモの前に置いた。
「ん?この猫ちゃんどっかで見た事があるような…」
アゴに手を当て考えていた職員だったが、答えは見つからなかったようで、そのまま立ち去って行った。
「まだ希望はあるはず。頑張ろう」
鳴き疲れて、喉が乾いていたモモがミルクを飲もうとしたとき、後ろから声が聞こえた。
「おい、お前…」
…
その頃ミケは、マロに道案内をしていた。
「マロくん!急ごう!こっちこっち!」
「うん!」
マロも必死についていく。
「ここ右!」
ミケは、すごく道には詳しい。だから、正しく分かりやすく、マロに道を教えている。
「ここは信号を渡るよ!」
「分かった!」
ここが一番危ない場所だ。
「ここ危ないから、ちゃんとついて来てね!」
「うん!」
ここで、よく怪我をする猫がいるんだよなぁ〜…。
「青になった!行くよ!」
「分かった!こっちだね!」
マロは、車道の方へ飛び出した。
「あ!マロくんそっちじゃない!」
「え?」
「あっ!」
マロに向かって、一台の車が近づいて来る。
“ミケが命をかけてでも助けないと!”
「マロくん!危ないっ!」
ミケは、慌ててマロを追いかけ、尻尾に噛み付いた。
「ウギャーーーーーーッ!いたたた!!!ミケ姉何するの!?」
マロは、涙目でミケの方に振り返った。
そのマロの目の前を、自動車が走り抜けた。
「はぁ、危なかったー…。」
ミケはマロを歩道まで連れていった。
マロはひかれる寸前にミケに助けてもらったのだ。
ミケは、それだけの勇気がある、すごい猫だった。
「……」
「マロくんどうした…」
ミケが言っている途中に、マロは言ってくれた。
「ミケ姉、ありがとうっ!しっぽは痛かったけどね!」
マロは、尻尾を舐めながら、満面の笑みでそう言った。
「う、ううん!全然いいよっ!」
ミケも、満面の笑みを返した。
「急ごうっ!」
「うんっ!」
そして、再び愛護センターへ急ぐ…
…
「おい、お前…」
振り返ると、一匹の黒猫が立っていた。
「上手いことやったな、そのミルク俺にも分けてくれよ。同じ檻の仲間じゃねーか」
そう言いながら近づいて来た。
「うん。いいよ。みんなで飲もうよ」
そう言って、檻の中のみんなに声をかけた。
モモのいる檻には、他に犬と猫が三匹いた。
いつの間にか近づいて来て、ミルクを飲み出した黒猫と、檻の隅でうずくまっている老犬、反対側の端で様子を伺っている子猫だ。
「俺はクロってんだ。お前は?」
黒猫が尋ねてきた。
「私はモモ」
そう答えたとき、老犬から声がした
「なーにがクロだ、本当の名前は九郎兵衛じゃろう。ちなみに、わしの名前は『ごましお』じゃ。ごま爺と呼んでくれ」
ごましおは、むくりと起き上がりそう言った。
「九郎兵衛言うな!」
九郎兵衛は、ムッとした顔でごましおに言ったが、ごましおはそんな事はおかまいなしに「はっはっは」と笑いミルクを飲み出した。
「んで、アイツがチビ。
名前が無かったから、俺が付けてやったんだ。
おーい、チビ!こっち来てお前もミルク飲めよ。」
クロが言うと、チビがトコトコやって来た。
「…チビ。よろしく。」
チビは、ビクビクしながらそう言った。
「ふふ、みんなよろしく。まずはミルク飲もうよ」
モモの声に安心したチビもミルクを飲み始めた。
みんなでミルクを飲んだ後、九郎兵衛が真剣な顔をして話し出した。
「みんな、静かに聞いてくれ。
このままだと、俺たち全員殺処分されちまう。
その前に…脱走しないか?」
…
愛護センターに近づいたミケは、後ろを向かずに進んでいた。
「マロくん!こっち!あれ?マロくん?」
はぐれた…?
「おーい!マロくーん!」
(どうしたんだろう…)
…
マロは、その時よそ見をしていた。
「あれ?ミケ姉?」
また迷子になっちゃった?
「ミケ姉!どこ〜?」
どうしよう…迷子になっちゃった…」
大きな声でお互いの名前を呼びながら、今来た道を引き返し、ミケとマロはお互い探し合っていた。
「あっ!マロくん!こっち!」
「あ!ミケ姉!」
やっと合流した!
ミケとマロは、周りを気にせず探していたので、今いる場所がどこか分からなくなった。
「え…?ここどこ…?
薄暗い…私ここ来た事ないよ…」
ミケは、不安そうに言った。
「えっ!じゃあどうすれば…」
マロも不安そうに言った。
「……とりあえず左っ!」
ミケは、勘を頼りに当てずっぽうに走り出す。
その当てずっぽうの道案内が、役立った。
…
「え…でもどうやって…」
モモは、九郎兵衛に尋ねた。
「このミルクさ。
人間がミルクの皿を取りに来た時に檻が開くはず。その時みんなで檻から飛び出そう。」
九郎兵衛は、自分の考えを話し、みんなの顔を見渡した。
「そうじゃのう、このままでは処分を待つばかり、一か八かやって見るかのう」
ごましおは、みんなの顔を見てそう言った。
(いざとなれば、わしが足止めしてやるかの。)
「チビは…クロについて行く。」
チビも賛成のようだ。
「お前は?どうする?」
九郎兵衛がモモに聞いた。
「そうだね、本当は怖いけどやってみる。ここに居るみんなの分まで生きるんだ!あきらめないよ!」
モモがそう言うと、みんな目を合わせて満足気にうなずいた。
その時「カチャリ」と音がして、ドアが開いた。
…
当てずっぽうの道案内が役立に立ち、見覚えのある道に出た。
「マロくん!ここから道分かるよ!」
「本当!?じゃあ急いで行こう!」
ミケとマロは、小走りで走り出した。
「ここ左で…ここ右で…ここ真直ぐ行って右ね!」
「うん!」
今度はミケも、ちゃんと後ろを見るように注意した。
「そしてここから左で……………あ!ここ右!」
「分かった!」
マロもよそ見せずに、ついて行った。
そして、とうとう目的地が見えて来た、
「マロくんっ!愛護センター見えて来たよ!」
「あっ!本当だ!」
二匹で目を合わせて、少しニコッと笑っていた。
「マロくん走ろう!」
「うん!」
…
「そうそう、あの猫このポスターの迷子猫だ。」
ポスターを手に、さっきミルクをくれた職員がやった来た。
「人間が来たぞ…みんな準備はいいか?」
みんな、無言でうなずく。
「おっ、ミルク全部飲んだな。
今出してやるぞ。」
職員が鍵を開け「ガチャッ」と音がし、檻の扉が開いた。
「今だ!」
九郎兵衛の掛け声と共に、みんな一斉に走り出した。
「よし!檻の中から出れた!」
モモ達は、全員檻から抜け出した。
「あっ、コラ!」
職員は、慌ててみんなを捕まえようとしたが、4匹のコンビネーションに翻弄されて、捕まえる事は出来なかった。
「せめて、モモちゃんだけでも」
モモは、職員が自分の名前を呼んだ事に反応して、思わず立ち止まってしまった。
「よし、捕まえた。」
その隙に、職員はモモをつかまえた。
「あっ、しまった!」
モモは、慌てて逃げようとしたが、抜け出す事は出来なかった。
「クソッ、後少しだったのに。」
悔しそうに九郎兵衛が呟く。
「お姉ちゃん…」
心配そうなチビの声が聞こえた。
「なんだなんだお前ら?取って食やしないぞ」
みんなの鋭い目に、思わず職員はたじろいだ。
その時「ワン!ワン!ワン!」と猛烈な勢いでごましおが吠え出し、職員に飛びかかった。
「わっなんだ?いつも大人しいごましおがどうした?」
いつもの大人しい、優等生のごましおが怒ったことに驚いた職員は、モモを手放した。
「やった。抜け出せた。」
モモは、空中でクルリと回ってフワリと着地した。
「お前達、今のうちに行け!」
いつもののんびりとした口調でではなく、厳しい口調でごましおがそう叫んだ。
「でも…ごま爺が…」
「そうだぜ、逃げるならみんな一緒だ!」
みんなごましおの事を見捨てられなく、逃げようとしない。
「はぁ〜、しょーがねーなー」
そんな様子を見ていた職員は、クルリと向きを変え部屋の入り口を開けた。
「お前達、見逃してやるから早く行きな。」
職員の意外な行動に、みんな戸惑い、顔見合わせる。
「お前達みたいな仲間思いで優しい奴…嫌いじゃないぜ。」
そう呟き、職員はごましおの頭をなでた。
「あー、また上司に説教されるなー」
職員は、ぼやきながらも顔は笑っていた。
「ありがとな、あんちゃん」
九郎兵衛は、そう言いながら、職員の横を通り抜けた。
チビは、ペコリと頭を下げた。
「ありがとうございます」
モモがそう言うと、「あっ、モモちゃん飼い主さんが探していたから真っ直ぐ家に帰るんだよ」
と職員が教えてくれた。
そして、最後にごましおがつぶやいた。
「みんな元気でな。ワシはここに残る」
「えっなんで?」
モモは、驚き振り返った。
「実はワシは、長いことここにお世話になっておる。
みんなの心をケアして、殺処分されないように、新しい飼い主を見つけるまでのサポートをしておるんじゃ。」
ごましおの衝撃の告白に、目が点になるモモ達。
「それに、ワシまで逃げたらこのあんちゃん、クビになってしまうわ」と言って豪快に笑った。
「まぁなんにせよ、処分されずに済んで良かったじゃないか。もうここには連れてこられるなよ」
そう言ってごましおはウインクをした。
「わかったよ。じゃあ俺はもう行くぜ。ごま爺、達者でな」
「お前もな、九郎兵衛」
「九郎兵衛言うな!」
そう言って部屋を出て行く九郎兵衛。
「ありがう」と、チビは泣きそうな顔をしながらごましおに別れの挨拶をした。
「ごま爺、あなたが居てくれたから逃げる事が出来ました。ありがとう。」
モモは、ごましおに頭を下げて部屋を出た。
「うーん…あっ!こっちだ!」
モモ達は、一週間前の記憶を頼りに愛護センターから出る。
「よし!ここか!」
「出口が見えて来た!」
もう少しだ!
ドアの隙間から、光が差し込んでくる…。
…
「マロくん!こっちの方が近いよ!」
「そうなの?じゃあこっちから行こう!」
近道をしたが、その道は、とても狭かった。
「あっ!もうすぐ着くよっ!」
「猛ダッシュッ!」
狭い道を、走り抜けた!
…
そのころモモは…
「やったぁ!愛護センターから出れた!でも家の方向わからない…」
「それじゃあ、ここでお別れだな。」
愛護センターを出ると、九郎兵衛がそう言った。
「えっ、なんで?一緒に行かないの?」
モモは、不思議に思い尋ねた。
「俺とチビは野良猫、お前は飼い猫。
住む世界が違うのさ。
俺たちはいつも猫商店街にいる、もし困った事があったら尋ねてきな。
じゃあな。」
そう言って歩き出した。
チビも「お姉ちゃんまたね」と言って九郎兵衛についていった。
「またね、九郎兵衛!チビちゃん!」
遠ざかる二匹に向けて、モモは大きな声で言った。
遠くで「九郎兵衛言うな!」と言う声が微かに聞こえた。
…
モモは、愛護センターから出れたのは出れたのだが、家の方向がわからない…。
「……左行ってみよう!」
当てずっぽうの道案内だ。
モモは、左の道を進んで行った。
…
「モモちゃーん!」
「モモー!どこー?」
愛護センターまで後もうちょっと。
歩きながらもモモを呼んでいた。
「モモ…」
マロがそう言いかけたとたん、ミケは口止めをした。
「マロくんちょっと待って。静かにしてみて!」
ミケがそう言うと、「う、うん。」と、マロは静かにした。
ミケは声のする方に耳を傾けた。
「こっち右かなぁ。
こっち左?」
「ほら、聞こえるでしょ?」
ミケはそう言いながらマロの方を見た。
「うん…あっ!これってモモの声だっ!!」
マロは、嬉しそうな表情を浮かべてそう言った。
「え、うそ!!じゃあ声のする方に行こう!」
ミケはそう嬉しそうな声で言ってかけ出した。
「うん!」
マロもそう言いかけ出した。
モモちゃん、今迎えに行くからね!
…
「え…ここどこ…?」
モモは、見た事ない所にたどり着いてしまった。
「マロ…飼い主さん…」
モモは、その場で座り込んだ。
ポツッ…ポツッ…ザーーーーッ
「雨だ…」
モモは、辺りをキョロキョロ見回して、近くにあった休憩所まで急いで行った。
「ここなら、まだ大丈夫だよね…」
雨は、なかなか止みそうではなかった。
…
「あ、雨!」
「早くしないと、モモちゃんが!」
ミケはどうしようと言う顔をしながらも、モモを心配した。
「でも、もう僕寒くて凍え死にそうだよ…」
マロは体を小さく震わせながら、そう言った。
「え!じゃあどうしよう…」
ミケが悩んでいると、ちょうどいい時に休憩所が見えた。
「あっ!あそこの休憩所で少し休憩する?ちょうど雨宿りできるし。」
「うん…行こう」
マロは寒くて歯がガクガク震えているが、頑張って答えていた。
「よし!走って行こう!」
ミケがそう大きな声で言った。
「うん!」
マロとミケはどたどたと大きな音を立てて休憩所まで行った。
その時だ。
“奇跡”が起こった!
「あっ!」
“モモだ”
「あっ!」
“マロだ”
続きは週末に投稿すると思います。
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