なるようになれっ
絵里先輩に碧くんと話しがしたいとせがまれて、彼が友人と立ち寄りそうな場所を見て回ることになったのだけど。
今日はどのお店だろう。
考えられるところを頭に浮かべてみる。
そうだな、ファストフード店かな。お気に入りのお店は何軒かあるようだけど。
まず考えられるところは……。
ハンバーガーショップなのに、関西風のうま味出汁を活かしたうどんまで食べられる『マイド・オオキニバーガー』かな。
関西風にこだわっているのか、バンズが少し固めに焼かれたお好み焼きでできている。最早ハンバーガーではない商品がお薦めだ。
そしてもう1件は、ガツンとくる辛みが自慢のハンバーガーと、年中アイスの飲み物しか置いていない『激辛バーガーショップ・押忍』。まあ、辛いものを食べた後のホットの飲み物は、口中を大火山のように燃え上がらせる手助けをするだけなので、アイスしか置いていないのも頷ける。
しかも『押忍』って気合いを入れないと食べられない、いや、寧ろ気合いを入れても食べられないほどの激辛バーガーまである。
それとも『スイートハートカフェ』かな?
ここは甘~いココアが自慢の、カップルにもってこいのカフェ。
流石に男子同士でここはないか。
「絵里先輩。今日は碧くん、結構いっぱい歌ってたから、流石に激辛はないと思うんですよね」
「そうだね」
「それに甘々のココアもないと思うんで」
「確かに」
「じゃ、行ってみますか。『マイド・オオキニバーガー』に」
ということで、私たちは『マイド・オオキニバーガー』に向かうことにした。
店内で碧くんたちをみつけても、『わざわざ探して訪れた』のではなく、あくまでも『訪れたお店で偶然出会った』ということにしなくてはならない。
そう、なにげなく、自然に。
そして『せっかくだから一緒に食べよう!』とかなんとか言っちゃって、しっかりと同じテーブル若しくは隣のテーブルを確保しなければならない。
そう。あくまで自然に。
案の定、男子たちは『マイド・オオキニバーガー』の奥の席を陣取っていた。
同期と後輩合わせて5~6人の男子。
いつもならそこに紅一点の私がいるのだが。
先輩と私がカウンターで注文をしていると、目敏く私たちを見つけて碧くんがやってきた。
「お、あっこじゃん」
「わ、碧くん。びっくりしたぁ。来てたんだ」
と、あくまでも偶然を装う。
「俺らあそこの奥の席に座ってんだけど、来る?」
「あー、別にいいけど。先輩いいですか?」
と、あくまでも自然に。
「あ、先輩も一緒にどうですか?」
あれ?
絵里先輩にはちゃんと『先輩』って呼んで『敬語』を使ってるんだ。
「じゃあ、そうする」
嬉しそうな先輩を見ていると、つい応援したくなってしまう……。
ってか、なんで私こんなことしてんだろう。
もし、先輩が碧くんに告白でもして、付き合うことにでもなったら私……。
って、まだはっきりしないことで悩んでも仕方がない。
こうなったらもう、なるようになれっ!
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