『明日はバレンタインデー』
それは寒い寒い2月のとある日。
世間一般でいうところの、『バレンタインデー』を前日に控えた13日。
「おつかれ~」
「おつかれっ」
部活の帰り。
みんな挨拶をすませて、それぞれ帰って行く。
そんな中、私は今日は碧くんとふたりで帰る。
またいつものように冗談を言い合ったり、おちょくられたり、おちょくられたり。
やたらとちょっかいをかけてくる彼。
いい加減やめてほしいとも思うけれども、楽しそうにひとのことをおちょくっている姿が微笑ましくもあり、つい許してしまう。
今日だってまたいつものように私が目の前に立っているにもかかわらず、私の頭越しに遠くを見渡して、「あれ? あっこいないなぁ」だって。
もはやこれは定番。
というか挨拶代わりってところだろうか。
初めの頃は「え?」ってビックリして可愛く応対していたけれど、そのうち面倒くさくなってきて。
だんだん『ウザいな』なんて思うようにもなってきたけど、楽しそうにしている彼を見ていると、少し可愛くも思えたりして、つい許してしまう。「もう、またぁ」って。
最近は目の前でジャンプしたりなんかして、存在をアピールするようにしている。
すると碧くんは、「おっ」っと初めて存在に気づいたような大袈裟な素振りで返してくる。
私の気持ちも、『ウザい』から『楽しい』に変わってゆくのに、自分でも驚いている。
そんないつもへらへらしている彼だが、いざとなったら案外頼りになる。
先日も部活の帰りに駅前の路地を歩いていた時のこと。
この時期は部活を夕方の5時に終え、それから後片付けをし、バスには乗らずに最寄りの駅まで30分も歩けば、もう暗くなっている。
まだ6時前なのに、千鳥足のオジサンが前方から、私になにか言いながら近づいてこようとしたとき。
「なに?」
と、睨みをきかせて私の前にサッと出て、そのオジサンに対峙する姿は『カッコイイ』としか言いようがなかった。
とっさに守ってくれるなんて、いつものへらへらしている彼とはちょっと違う。
その迫力に負けたのか、その千鳥足さんは「チッ」っといいながら去って行く。
そんな碧くんの姿を見て、キュンとしたのは言うまでもない。
以前から仲が良かったのを差し引いても、友達というよりは……その……的な感情が芽生えてきているのは確かだったが、この時に確信した。
彼はどう思っているのだろう。
いつものようにたわいない話をしながら歩くこと30分。もう駅に着いてしまった。
「じゃあ、また明日ね」
明日は映画を観に行く約束。
「チョコくれよな」
そう、友人として。
「友チョコあげるね」
笑いながらそう答えたけど。
「おう」
ホントはね。
明日はバレンタイン。
思いきってチョコ渡してみようかな。
お読み下さりありがとうございました。
次話『待ってて♡バレンタイン』もよろしくお願いします!
本日更新します!