『明日はホワイトデー』
月曜日にお互いの誤解が解けて、また以前のように仲良く会話するようになった碧くんと私。
昨日は部活の帰りもふたりで一緒に帰ったし、お互いに思っていたことを言い合って解り合えた分、私は前よりも距離が近くなった気がする。
だけど……。
彼は、碧くんはどう思っているのだろう。
今日も部活のあと一緒に帰る。
いつものようにたわいない話をしながら歩くこと30分。
本当にとりとめのない話ばかりで、笑い転げながら歩いている感じ。
楽しい時間は早く過ぎるもので、あっという間に……もう駅に着いてしまった。
乗る電車が違うから、もうここでバイバイかと思うと、ちょっと寂しい。
そんなとき、ちょうどひと月前の今日のことを想い出した。
ひと月前のバレンタインデーのあの日のことを。
『じゃあ、また明日ね』
翌日は明日と同じく映画を観に行く約束をしていた。
『チョコくれよな』
そう、友人として。
『友チョコあげるね』
その時は笑いながらそう答えたけど。
『おう』
ホントはね……。
そうしてバレンタインの当日は手作りチョコを渡した。
だけど、バレンタイン後も……特になんの進展もなく。
まあ、前日に「友チョコあげるね」なんて言っちゃってるし。
「友チョコサンキュ」なんて笑いながら言われちゃってるし。
でも、翌日碧くんが「一緒に帰る?」と聞いてきたとき、ホントは「うん」って答えたかったけど、「絵里先輩と帰る約束したから」って断って。
『そっか。じゃ、また明日な』
『うん、また明日』
そう言って左手でカバンを肩にかけ去って行く碧くんの後ろ姿を見送っていると、碧くんは振り返らず歩いて行きながら右手を大きくあげて、『手作りチョコ美味うまかったよ。サンキュ』なんて言ってくれて。
あ、食べてくれたんだ。しかも手作りって気づいてくれた。
それが解って凄く嬉しかったなぁ。
『……』
振り返らずに発せられた彼の言葉に、体中の血液が波打ってゆき、初めは小さかった波も、その言葉を噛みしめるように段々と大きな波になっていった。
どういたしまして。
言葉にはならなかったけど、心の中でそう呟いたのを覚えている。
それから今日までの間に、本当にいろんなことがあった。
それもまた良い想い出ということだろうか。
まあ、今は仲良くできているということは、辛く哀しかったことも、いつかはきっと良い想い出に変わるのだろう。
明日はホワイトデー。
私がバレンタインにチョコあげたこと、覚えてくれてるかな。
明日はホワイトデー。
お返し、期待してもいいのかな。
お読み下さりありがとうございました。
次話「『待ってろ♡ホワイトデー』」もよろしくお願いします!
本日完結します。あと2話です!




