普通通り
それでも時間は過ぎてゆき
久しぶりに見かけたキミは
ただ私には眩しく見えて
こころの奥が締めつけられる
恋の魔法にかかった乙女は
いつもジレンマ抱えてる
言ってしまいたい言葉は
どうしても言えない言葉
このままズルズルと時間だけが過ぎていってしまうのは仕方ないとは思うけど、そのままにしておきたくはない。
そんな思いで、次の部活の時に思いきって話してみようと思う。
1週間会えなかっただけなのに、もう1年も会っていなかったかのように感じる。
普通に話しかけよう。
え、でも。
普通って?
いつもどんな風にしゃべっていたっけ。
それすら考えてしまうなんて。
学校に向かうまでの間、ああだこうだと考えすぎてなにが普通かもわからなくなるなんて。
まあ、なるようになれと、その時にパッと浮かんだことを言おう。
倉庫に着くと、ラッキーなことに碧くんがひとりでギターの番をしていた。
「おはよう」
まずは、挨拶からだな。それが基本。
当然「おはよう」と返事が返ってくるものだと思うでしょ。
なのに……。
「ん、なんだ?」
とキョロキョロして、私のことは完全無視。
「おはよう」
気を取り直して、もう一度声をかけてみる。
「あれ? 空耳かな」
と小首をかしげる。
「おはよう」
もう一度、今度は大きな声で。
流石にもう、『空耳』とは言えないでしょう。
すると身長175センチの彼は、目の前に私が立っているにもかかわらず、その頭越しに遠くを見渡して、「ん? あっこの声が聞こえた気がする」だって。
私は目の前でジャンプしたりなんかして、思いっきり存在をアピールしてみた。
すると碧くんは、「おっ」っと初めて存在に気づいたような大袈裟な素振りで返してくる。
いつもと一緒。
以前と変わりなくちょっかいをかけてくる碧くんに、自然と笑みも零れる。
少しよそよそしくなってしまっていたのは、自分から壁を作っていたからなのかも。
「なんかこういうの久しぶりだね」
「そっかぁ?」
解っているくせにわざととぼける。
それも彼の優しさなのかと。
「なんかさぁ。最近ゆっくりしゃべってないなぁ、なんて思ってさ」
「かもな」
「聞きたいことがあるんだけど、時間ある?」
思いきって言ってみた。
「じゃあ、今日の帰りに『マイド・オオキニバーガー』でも行く?」
「『スイハ』がいいな」
少しロマンチックで甘~いココアが自慢の『スイートハートカフェ』を提案してみた。
ザワザワしたところでなくて、ゆっくり落ち着いて話がしたかったからだ。
「んじゃ、帰りに」
「うん。帰りにね」
と話がまとまったところに他の部員たちが登校してきた。
「おはよう」
「おはよう」
朝の挨拶を交わしながらも、帰りが待ち遠しく思える。
お読み下さりありがとうございました。
次話「聞いてしまおう。」もよろしくお願いします!
今夜更新します!




