揺れる気持ち
今日こそは一緒に帰れるのだろうか。
碧くんには前回すっぽかされているから、その時が来るまで信用できない。
またこの間と同じように嫌な思いをするのじゃないかと、少しばかりの不安がある。
一度そのようなことがあると、また同じことが繰り返されるのじゃないかと考えてしまうのは私だけじゃないはず。
その人のことを信用しているとしても、行動が信用できない、とでも言おうか。
またへんな期待をしてしまって裏切られるのではないか、と疑心暗鬼になってしまう。
どうでもいい人のことなら、はっきり言ってどうでもいい。
でも、好きな人のことになると、そうなってしまうのが人の常だ。……と思う。
この土日に頑張って練習した甲斐があって、部活での『合わせ』は思ったよりも順調に進んだ。
今の時期になってくると、本番さながらの練習をそろそろしようかというところ。
明日のリハーサルに向けて、曲と曲の間に入れる『しゃべり』の内容も考えなければならない。
曲順を決定し、持ち時間の最初から通してやってみる。
何度も繰り返し練習するのみ。
そうやって、少しずつカタチにしてゆく。
* * *
練習が終わり、くつ箱のところに行くと、碧くんがひとりぽつんと立っていた。
待っていてくれたのかと思うと嬉しい気持ちもあったが、先週の金曜日、いやそれ以前からのいろんなもやもやが蘇り、また余計なことを言ってしまう。
「今日は私と帰ってもいいの? 他の女子がまた誘いに来るかもよ」
碧くんの凜々しい眉がピクッと動く。
「かもな」
あ、しくじったか……。今言うことではなかったかな。
なにやら怪しい雲行きに……。
「ごめん」
とりあえずは謝っておこう。
いや、でも私が悪いわけでもなにのに、謝るなら碧くんが先だと思うけど。
「べつに」
はあ? べつにってなによ。なんか無性にムカつく。
「なに、その言い方」
ちょっと強い言い方になっちゃったけど、仕方ないよね。
「なにが? 早く帰ろうよ」
「あ、うん」
少し拍子抜けした感はあるが、『乙女』特有の秋の空風な揺れる気持ち、わっかるかなぁ~。
男子は案外そういうとこ、なにも考えていないのかも! なんて思ってしまう。
みんながみんな、自分と同じ思考や感じ方をするとは限らない。
ひとそれぞれの捉え方があるのも確か。
まだ解らぬことで気を揉むのはやめにしよう。
って、何度思ったことやら。
でも、今度こそ。
そうしてふたりで歩き出したのだけれど。
お読み下さりありがとうございます。
次話「気を揉む時間」もよろしくお願いします!
14日に完結予定です。
ラストまでよろしくお願いします!




