テスト勉強
土曜日、テストまで残り2日。
今日は二宮が家にくる。俺は彼女が嫌いだが、成績優秀の愛佳が家にいない。
仕方なく、俺は成績のいい二宮に彼女のいう友達の定義とやらを利用して勉強を教えてもらうことになった。
「そろそろ13時か。」
俺は前日を勉強ではなく、汚く散らかった部屋の掃除に費やした。いくら二宮でも、女子を自分の家に上げるのは初めてだから少々緊張した。
「ピンポーン」っとインターフォンがなった。
「来たか」っと俺は玄関に出向いた。
「はーい」っといいドアを開けると、そこにはいつもの制服姿とは違い女の子らしく目一杯おしゃれをした二宮がいた。不覚にも俺は二宮の私服姿にかわいいと思ってしまった。
「こ、こんにちは黒川。今日はあなたのために勉強教えにきてあげたわよ。感謝しなさい」
どうやら、二宮も男子の家に来るのは初めてのようだ。少々緊張した様子が伺える。
「まぁ、入れよ」
「おじゃまします。」
そして俺たちは俺の部屋へ移動した。
「へぇ、これが黒川の部屋か。なんだか殺風景な部屋ね。まるであなたの顔と同じくらいぱっとしない部屋だわ」
「うるせぇ、ほっとけ」
「ど、どうかしら」
「何がだよ?」
「何がって、それは私の今日のファッションについてよ!ほんと鈍い男ね」
「まぁ、いいんじゃないか似合ってるしかわいいらしいというか」
「か、かわいいって。別にあんたに言われてもうれしくないわよ」
二宮の顔はみるみるうちに赤くなった。
「何、照れてるんだよ」
「別に照れてないわよ、それよりはやく勉強しましょう」
最近俺は赤面する二宮をからかうことにはまっている。
「で、黒川は何が苦手なの?」
「基本的に勉強は全般苦手だけど、強いて言うなら英語かな」
「英語って、あんなの勉強するもんじゃないわよ」
「それはお前はこの前まで海外に住んでたから苦労しないだろうけど、ずっと日本に住んでいる俺にしてみたらこんなの暗号にしか見えねぇよ」
「まぁ、いいわ。じゃあ英語からやりましょう。えーと今回のテスト範囲は不定詞、動名詞ね」
「お願いします。」
ここから約2時間に及ぶ二宮による集中講義が始まった。
内心解けない問題があったら「あんた、こんな簡単な問題も解けないの。ばっかじゃないの」のひとつやふたつくらいの文句を言われると思った。
しかし、二宮はそんなことは言わず、一からやさしくひとつひとつ丁寧に教えてくれた。
正直、学校の先生よりもわかりやすかった。
「いっかい、休憩しましょうか」
「そうだな」
二宮は俺の持っているテレビゲーム機に視線が移っていた。
「ねぇ、黒川。あなたはよくゲームをやるのかしら。」
「まぁ、ぼちぼちな」
「そう...ねぇ黒川、気分転換にゲームやらないかしら?」
「別にいいけど、意外だなお前でもゲームやるんだな」
「何よ意外って、私だってゲームくらいやるわよ」
「まぁ、いいや。じゃこれやるか」
「ふん、私に泣いておじけづいても知らないわよ」
二宮の目はギラギラっと光っていた。よほど、自信があるのだろう。
っと思った矢先、、、
二宮は半端じゃないくらい弱かった。
「もう一回よ。次こそは」
さっきの自信に満ち溢れていた発言はどこかへ消えていった。
気づいたら夕方になっていた。
「今日はこのくらいで勘弁してあげるわ。」
「それしても久々にゲームやったけど楽しかったわ」
「おう、もっと腕磨いたらまた勝負してやってもいいぞ」
「ばかにしないで!見てなさい、次こそは勝ってみせるわ」
突然、二宮は子供のときの話をしだした。
「わたしね、昔からまわりから避けられいて、友達がいなかったんだけど、ある日ある男の子が俺と一緒に遊ぼうっていってくれて、それからわたしはその子とよく一緒に外で遊んだり、今日みたいに一緒にゲームしたりして遊んだりしていたの。だから今日はほんとに楽しかったわ」
「お前もいろいろ大変だったな。ゲームの相手なら、またいつでも俺が相手してやるよ。なんだって俺はお前の友達だからな」
「ありがとう、黒川。」
その日は結局勉強よりもゲームをしている時間のほうが長かったが、楽しかったからよしとするか。
俺は二宮が帰ったあとから勉強を教えてもらった二宮のためにも必死に勉強した。
そして、二宮からメールが来た。
「今日はありがとう。
私のゲームの相手につき合わせちゃってごめんなさい。
テストがんばろう。わからないところがあったら聞いて。」
最初は俺を中二病呼ばわりして嫌いだったが、今はそんな悪いやつじゃないように思えてきた。
二宮が言っていた子供のときにある男の子に声をかけられて一緒に遊んだって言ってたけど、俺がこないだ見た夢に似ている。まさか、俺は幼いときに二宮と会っているのか。
月曜ついに試験が始まった。二宮のサポートがあってか、どの教科も平均点を上回った。
そして、金曜の夜、二宮からメールが来た。
「ごきげんよう、黒川
今回のテストがんばったじゃない。まぁ、私のサポートがあったおかげだけど
日曜って空いているかしら?ご褒美としてこの私がデートしてあげてもよろしくてよ。」
(いちいち、癇にさわるやつだな。まぁ、家にいてもなんもすることないからいいか)
「ありがとよ。日曜は空いているぜ。」っと
「じゃあ、12時に峰崎駅に待ち合わせね」
「了解。」