7.今の私
「言葉だけならいくらでも言える!…それに好きじゃなくてもできる」
やっと息ができるようになって、でも話したくて。
「このタイミングで言われても同情にしか思えない」
「そうですね」
ほら、やっぱり同情なんでしょ?
何でそんな風に背中を撫でるの?
それじゃあまるで…。
「ミオリは言葉を発しないと力を使えない。だから機会はありましたよ。口をふさぎ腕を拘束すればいつでも。身体だけなら手に入った」
上を向かされ、刺さるような視線が痛い。
「俺が欲しかったのは、欲しいのは身体だけじゃない。気持です。両方ないと意味がない」
「なら、なんで今?」
刺すような瞳が一気に弱くなった。
泣きそうな顔に。
なんで?
泣きたいのは、泣くのは私じゃないの?
「今日は何日ですか?」
「えっ?」
「今朝、食べた物は覚えていますか?」
「食べた物…」
「それに今は夏じゃない。俺の服、分かりますか?」
彼の砂の上に広がっている服は色が黒い。
夏服はもっと明るい色だ。
「…夏じゃない?」
「今は、秋ですよ」
秋?
「ミオリ。貴方は、もうずっとろくに食べも、眠ることすらしていない」
私が?
「自分を見てみろ。もう、精神だけじゃない。身体も限界だ」
言われて、掴まれた腕を見ろと前にだされた。
私の、私の腕も、見下ろせば足も、まるで骨に皮がついているだけのようだった。
「これ、これが私?」
「そう。このままではどうせすぐ死がくる。だから選べ。今すぐに」