6.選択を迫られる私
「いらない」
「ミオリ」
「仮定の話じゃない。しかも同じ時に、場所に戻れるのかも分からない。最悪、空間を漂っているだけだってあの腹黒言ってたし。それも永遠に」
ふいに体に風が吹いた。どうやら私の服を魔法で乾かしてくれたんだろう。
服の隙間から見える海は、色を暗くしていく。どれくらい経ったのか。
横にいる彼から言葉がふってきた。
「なら、家族になりますか?」
家族?
この人は何を言っているんだろう。
「今さら兄弟なんていらない」
「来たばかりの頃、よく言っていましたよね。家族が羨ましいと」
いつの話をしているの?
「痛っ」
上着ごと硬いものに包まれていた。
痛いくらいに。
「核はここにある。触れ歌えばいい。そうしたらすぐ出せる」
締めつけが緩んだと思ったら、右手を掴まれ見なくてもわかる。彼の胸に私の手は置かれている。
「ああ。最後になるかもしれないから訂正はしておきたい」
いきなり頭が軽くなり、視界がひらけた。彼に上着を剥ぎ取られたようだ。肌が海風にさらされ寒くなる。
「俺は、ミオリの兄弟になりたいわけじゃない」
それに顔が近い。
今にもお互いの額がつきそうだ。
「妻に。俺の妻にです」
私の見開いた瞳が彼の目にうつる。
「ミオリ、どちらを選ぶ?」
冗談でしょ?
そう言いたかったのに。
言えなかった。
彼の口で口を塞がれたから。