10.知らされた俺
「好きにしていいよ」
彼女の言葉に頭がくらりとした。
ミオリは、特殊な力を持ち歌い触れれば核を取り出せ魔物は一瞬にして塵にする力を持つが、普段は隙だらけで見張っていなければ簡単に消えてしまいそうな危うさをだしていた。
そして、この俺にいとも簡単に隊長の座を捨てさせた。
彼女が正気に戻ったまではよかった。
こちらに残る判断をしてもらえたのも。
だが、こんな夜にさしかかる時に湖に連れていけとねだられ来てみれば。
こんな数を一人で拾ったのか?
そんな声を聞き続け独り耐えていたのか?
そんな事をしていれば壊れもする。
なによりも。
──俺達は、そんなに信用できなかったのか?
否。言葉も通じず、いきなり一人で来たのだ。
国じゃない、世界を越えて。
湖の光の気配を探れば、もはや魔の気配ではない。全く違うものだ。
むしろ清みすぎている。
ミオリは転移できない。
何か補助の魔具でも使っていたはずだ。
なら、手助けしていたのはベイか。
だが、湖のコレを知っていたなら、好奇心旺盛な奴なら黙っていないはずだ。何か取引をしたに違いない。
「ククッ」
「デュイさん?」
「ああ。すみません」
つい笑い声を出してしまった。
不安そうな彼女に謝る。
彼女の両手は固く握りしめられ爪がくいこんでいそうだ。強引に、だが力をいれすぎないよう両手に触れ手をゆっくりと開かせる。
「傷になってしまいますよ」
「デュイさん? …怒ってないんですか?」
俺が?
「いえ、全く。してやられた思いはありますが」
この俺の監視から抜け出し、しかもずっとこんな事をしていたとは。鈍ったものだ。また城で一から鍛練しよう。
「惹かれるわけだ」
「え?」
首を可愛らしく傾げるミオリに伝えた。
「これらの気配は既に別の何かに変化しています。だから解放して下さい。貴方の身体に負荷がかからなければ」
それに。
「貴方もそれにより解放されるでしょう。我々は貴方に感謝すれど憎しみなどない。なにより辛い思いをさせてすみませんでした」
俺は間違っていた。
貴方は弱くない。
貴方は誰よりも強い。
ミオリは、俺の瞳をしばらく見つめた後、湖に手をいれ静かに歌い出した。




