プロローグ
あなたは存在するの?
私は存在する。少なくともこの世界の中では。
――それはどういうこと?
まだ私にもわからない。
――まだ? いつかわかる時が来るの?
さぁ、ただ来るかもしれないし、来ないかもしれない、どちらの可能性も存在する。少なくともこの世界では。
彼女は夢を見た。
――そこではたくさんのわたしがいた。もちろん現実にはあり得ない。
――でも夢に思えないのはなぜだろう?
ふと、時計を見ると針は八を指そうとしていた。
学校に行かなきゃと思い、急いで支度をして学校に向かった。
彼女は家をぎりぎりに出たわりには意外と早く学校に着いたので、――もう少し家でのんびりしててもよかったかな、とも思いながら鞄を開けて文庫本を取り出した。
「おはようー」
「おはようー昨日なにしてたの?」
クラスメイト達がわいわいと喋りだす。
そんな中、彼女は文庫本をもくもくと読んでいる。
――わたしは友達が多いほうではない。いや、ほとんどいないが正しいかな。別のクラスの秋ちゃんくらいだけだ。いつもこのクラスではひとりぼっち、でも秋ちゃんがいるから大丈夫。
――後で、会いに行こうかな。
体育の時間が彼女は嫌いであった。ただ運動自体はべつにそこまで嫌いな訳じゃない。
でも――体育の時間は二人一組になることが多いからだ。
彼女はだいたいいつも一人なので、先生と組むことが多い。そんなのは恥ずかしい。みんなに笑われているようにも思えた。――いや、実際に笑われているんだろうな。
だから最近は仮病で休むことにした。
「ああ……秋ちゃんがいたらいいのになぁ」
彼女はぽつりと呟いた。