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発展途上の魔法文化圏  作者: 桜音羽瑠
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【5話】 能力の使い方




「……先生、何か僕が壁に張り付いているんですが……」

「あらっ変ね、故障かしら?」

「えーと、榎本くん、どうしたの?」

「え、いやうん。何か思ってたのと違ってね……」


 予想のななめ上を行く展開。能力がダサいとかじゃなくて、まさかの謎っていう……

 全く、俺らしいっちゃ俺らしいけども。


「どんな能力だったの?」

「それが……謎なんだよ、明確な能力がわからないんだ」

「はいはーい、榎本くんは後で再検査しまーす。次の人は……えーと柏木さんね」


 はぁ、なんなんだよ。何か拍子抜けしたな。


 それかた次から次へと診断が終わり、南雲のところに行き、能力を開花させていく。

 あるものは炎を操り、雷を操り、氷を操り……そして物凄い速度で剣を振り回したり、物を浮かせたり、自分の拳を硬化させたりしている。


 その中でも一際目を引いたのが白亜の能力だ。自分の周りに薄い霧を張り、その霧を濃縮して身に纏い、サンドバックに当たる瞬間に濃縮を還元しその圧力で粉砕している。

 その姿はとても美しく、綺麗に舞を踊っていると錯覚させるほど綺麗で、思わず見とれてしまいそうだ。


 この数分でクラスの俺以外の全員がそこそこ能力を使いこなせるようになった。

 誠に遺憾である。


「おー、全員使えるようになったか、流石南雲くんだねぇ、でもこれはみんなの適正のある能力だから早く覚えられただけ。他のを覚えるのはこう簡単に行かないわ。それを覚えておくように」


 先生がクラスのみんなに話を瞬間、再び何かが軋む音がした。


「先生、何かが軋む音がしませんか?」

「ん?そうかしら、みんな静かにして」


 先生が目を閉じ、耳を澄ませる。それに会わせて数人も目を閉じて耳を澄ませていた。


「駄目ね、聞こえないわ」

「そうですか……」



 と、その時、「ガコンッ」という何かが外れた音が聞こえた。

 その音とほぼ同時に天井から鉄柱が二十数本落ちてきた。





 物凄い音を立てて鉄柱は地面と激突した。




 成すすべもなく、ここにいた約半数は下敷きにされた……



「みんな……なんで……」


 どうやら先生は助かっていたらしい。しかし、璃緒の姿が見あたらない……


「ああ……ああああぁっ……何で、みんな……璃緒…………………………」







「っはぁ!!」


ーーという光景がスッと頭をよぎった。だがしかし、先ほど落ちたはずの鉄柱はまだ落ちていない。


 さっきのは……一体なんだったんだ……


 今はまだ先生が目を閉じている


 しかし、俺にだけ聞こえる軋む音は鳴りやまない。上を見ればかすかなずれが生じている結合部。


 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!


 このままじゃ鉄柱が落ちる!!


「みんな逃げろ先生の近くに!!早く!!鉄柱が落ちる!!」


 俺は咄嗟に叫んだ。


 俺の叫びが余程血気迫っていたのか、全員が先生の元へと駆けていく。


 ……一人逃げ遅れた白亜を除いて。




 咄嗟に白亜の元へと一人駆け出す。

 ただひたすらに、必死に白亜の元へ走った。

 とても短い時間のはずだがとてつもないほど長く感じられる。


 白亜にたどり着いた時にはもうすでに鉄柱は頭上約5メートルだった。



 白亜を抱き抱え、鉄柱が落ちてくる所を一瞬の判断でかわし、鉄柱同士が重なり合い空洞になるところを瞬時に探しだし、そこへ潜り込んだ。




 ここまでの経過時間約5秒。




 ずしんと、地面を揺らす音が響きわたる。地面がえぐれ土煙が舞う。

 叫び声が飛び交う中……


「みんな急げ!!何でもいいから能力で瓦礫をどかすんだ!!」


 叫んだのは南雲だった。

彼の叫びによってクラスメイトは各自の能力で、瓦礫をどかそうとする。しかし、それよりも早く動いたのは先生だった。


「【アイスハリケーン】」


 上級高位魔法、【アイスハリケーン】は発生させた冷気を帯びたハリケーンに、氷のやいばまとわせ、範囲にあるもにすべてを切り刻み、吹き飛ばす氷と風の高位能力者が扱える魔法。


 物凄い迫力と冷気を纏った先生が放った【アイスハリケーン】は鉄柱一本一本を確実に切り刻み、その鉄塊を別のところへ飛ばし、どんどん鉄柱が無くなっていく。


 やがて、俺と白亜はみんなからも見えてきた。

 先生と南雲が瓦礫に向かう。


 ……その時、俺と白亜はショックで気絶していたらしいが、傷ひとつ付いていなかったとのこと。



                ◇ ◇ ◇ ◇



 俺が次に目を覚ましたのは保健室のベッドだった。

 目を覚ました瞬間、璃緒が心配してくれていたのか、俺に飛び付いてきた。

 これには流石にドギマギしたが、なんとか自分を保った。


「慧くん、本当に心配したんだよ!でも良かった!目を覚ましてくれて」


 璃緒が飛び付いてきている近くで一人の少女が申し訳無さそうにたたずんでいる。


「あ、あの……ごめんなさい、私のせいで……」

「いいや、気にしなくてもいいよ、ほら、俺も白亜も怪我してないだろ?」

「あ、いや、でも……」

「気にすんなって、俺が勝手にやったことだし」

「う、うんありがとう」

「あのときの慧くんの動きはかっこよかったよ。あ、そう言えば、聞いてなかったけど、慧くんどんな能力をだったの?」





 あのとき俺は、微量な音を感じとり、遠くの物をあっさりと目視し、物凄い思考速度で状況を把握し、白亜を抱えたまま安全な場所を一瞬で判断できてしまった。





 そして未来視……あれがなければシロアも璃緒も下敷きになっていたであろう。


 しかし俺にはわからない。なぜ音を聞き取れたのかも、遠くの物が見えたのかも、そして、未来が見えたのかも。


「それが……わかってないんだ、でも俺はあのとき……未来視をしたんだ」

「未来視かぁ……聞いたことないなぁ、未知の能力なのかも、楽しみだね」

「お、おうよ」


 個人的にはもっと派手に炎とか氷とかを使いたかったんだけどな……まぁこの謎の能力のお陰でシロアを助けられたことだし、良しとするか。

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