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六ノ太刀【馬乗り以上に危険な体勢はあるのか】

 茉理としては試合で勝った時に相手に一個だけ命令出来るという取り決めが一番の楽しみなんだそうだ。

 俺は茉理に負ける度に完璧に理不尽なことをさせられていた。

 風呂掃除にトイレ掃除。廊下の雑巾掛けにその他諸々と……こいつは絶対サドだと確信出来るくらい色々なことをず〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッとさせられていたのだ。

 それもこれもジジィが取り決めたルールのせいである。

 あのジジィ、いつか引導を渡して勝ってやる。いつになるかわからない訳だが。



 今日の俺は何だか気分が良かった。負けても良いって思っていたのに勝ってこんなに爽快になるとは思わなかった。ツルギに良いところも見せられたし。

「若造は結構強いのだなッ」

 ツルギも上機嫌だし一石二鳥だ。子供の行進のように手足を大きく動かしている。

「まぐれだって。いつも負けてるしな」

 そういう俺だって内心物凄くニヤニヤしているのだ。

 茉理に一泡を吹かせた訳だし、もうあんな理不尽をぶつけて来るなんてこともないだろう。今日はツルギとジュースでも飲んで盛り上がるか。

「それでも良い試合だったな。やはり強者同士に守りなど不要なのじゃ」

 そういや今日俺ガードしてなかったな。いつもだったらガードと避けを駆使して必死に負けてたのにそんな考えも浮かばなかった。

 誰かに命令されてるような感じさえしてたほどだ。

「いつか、吾とも一試合やらせて欲しいものよ」

「あ、ああ。良いんじゃないか?茉理ならいつでもお前に戦闘態勢だろうよ」

 茉理は結構ねちっこいことを知ってるからな俺は。朝言った無残事件まだ覚えてるだろうよ。

「ふふ、楽しみじゃな。さてと、わかぞ―――」

「冬兎――――――ッッ!!!!」

 ツルギが俺に話題を持ち出そうとした時、茉理が後ろから俺の名前を呼びながら走って来た。


 ―――――バキャッ


 俺はラリアットの要領で振り向いたと同時に首に腕を掛けられ、そのまま連行されて行くのである。

「ぐえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ………」

 そして茂みの近くになると、茉理は俺を投げ飛ばすように茂みに突っ込ませた。

 とりあえず、茂み版スケキヨの完成である。やばい、茂みと言えど枝が刺さって痛い。

「何すんの!?」

 ちょっと昇天してたのだが直ぐに起きて文句を言う。

 しかし「冬兎!」と真剣な表情をしながらドスンッと馬乗りになって来るのでこいつは本当に女かと文句が失せてしまった。ミニスカートだぞおい。

「アンタ、あの子に操られてるんじゃないの!?」

「はっ!?何を言ってらっしゃるのこの茉理さんは!何かのショックでも受けたか!」

「あ、アンタが悪いんじゃない!いつものアンタ、試合中でもだらしない顔してたのに、今日は人が変わったみたいに不気味な表情して!」

 なんかドンドン俺の評価が酷いことになってると思うのは気のせいなのか。

 不気味な顔って言うのはあれか。エロ顔か、エロ顔なのか。試合途中でアヘアヘしてたらそりゃ気持ち悪いわな。叩かれて「頂きました―――ッ!」とか言えば良いのか。

「そんなこと言われても、俺は普通にお前とやってただけだぞ…」

「違うわ!アンタは…あ、ああああたしに対してあんな戦い方したことなかったじゃない!いつもいつもわざと負けて…あたしを、あたしを笑ってたんだ!こんな奴に本気出すことないって笑ってたんだ!」

 なんだこの波乱万丈な恋愛展開は。

「いや、違うって!俺はいっつも本気出して――」

「違わないじゃない!アンタはいっつもいっつも避けてばっかり!あたしと本気でやってくれたことなんてない!なんで!?あの子が…ツルギって子がいるからでしょ!?」

「俺は幼女狂愛者(ロリコン)か!?あいつ外見中学生行くか行かないかだろ!?」

「関係ないわよ!バカでも朴念仁でも…す、好きになる子がいるんだから!いつ性癖が変わっても不思議じゃない!」

 俺に捕まれとおっしゃっているのでしょうか茉理さん。

「ていうかツルギは俺の範囲外だ!」

「どうせ今のアンタから見たらストライクなんでしょ!?今のアンタは人妻とかに絶対付いて行くわ!この…この変態!」

「お前、人妻なんて言ったら牽制球(けんせいきゅう)をホームランにする勢いじゃん!超ボール球じゃん!そんなんだったらロリコンになるわ!」

「やっぱりロリコンなんじゃないの〜!ばかぁ〜〜!」

 

 ―――――――――――なぜそうなる!!!?


「落ち着きましたでしょうか……」

 背を向けて泣いている茉理さんに問いかけてみますが返事が来ません。

 なんで泣いたんでしょうこの子は。幼稚園児ビックリの泣き方だったぞ。一体なにがあったんでしょ…というかそんなに俺に負けたのが悔しいか。

「う、うるさいわよバカ…」

 どんなになっても口は減らないですねッ。

 まぁそんなこと口が裂けても言えないので黙っておく訳ですが。

「…あの子のこと好きなの?」

「だぁかぁらぁ!俺はロリコンじゃなければ奥さん好きでもないの!普通の、俺と同じくらいの年の子が一番タイプなんだよ…ってなんでこんなこと訊いてんの?」

「なんでもないわよ…あ、あたし戻るから…」

 背を向けたまま立ち上がると、どうやら本館…の自分の部屋に戻るっぽいな。

「また明日か?まだ昼だぞ?」

「………どっちでも…」



「くふふ、数珠丸はどうやら上手く動いているようじゃの〜」

 吾は手に握っている二つの刀を見て気分が良くなった。成功のようじゃ。

 余りこういうことはしたくないのじゃが、あの小娘も上手く伝えられなくて空回りしておるし、どうやら若造は朴念仁のようだからの。人肌脱ぐのも童子切の努めだ。

「もう良いぞ、数珠丸。また頼むのじゃ」

 吾がそう伝えると、数珠丸は握りに巻きついている光数珠を輝かせて、一瞬で消える。いや、姿を消したと言う方が納得出来るな。

 いやしかし何より、数珠丸が考えより上手く使えたな。鬼丸には少ししてやられたが、まぁそれもいつか出来んようにしておこう。

「しかし、時代は変わったのぉ。吾がいた時は………む?吾がいた時…?」

 どうやら、ここに来る前に必要以上のことを忘れてしまったみたいじゃの。過去…まぁ記憶にない上に、おうてもなくてもわからないものじゃがの。

「…大事なことのような気がするのぉ。こう、忘れてはならぬような…それとなく懐かしい気分になるというか」

 訳もわからない感覚だ。数珠丸達には記憶がまだあり、それを吾に見せているのだろうか。それで吾は無意識でそれを感じ取っている、と言ったところだろうか。


「本当に、心配性な者達よのぉ。自分達の心配をすれば良いだろうに。一度叩き折った相手を味方するとは…」

 空を見上げようとしたが、吾の面に翡翠色の見事な夏葉が舞い落ちる。

 便利になったとは思うたものだが、こういう物がある辺り、まだ日本の文化も廃れてはいないということなのじゃな。

 それを手で摘むと左手を強く振り、起こした風に葉を舞わせる。

「まぁ――――それも良きかな良きかな♪」

というわけで、更新です。久し振りのような気がする…一週間経ちましたからね。

ほとんどの人は夏休みが終わり、会社、または学校生活が復活です。

ボクはなんど引き篭もりになろうとしたことか…。

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