参ノ太刀【夢とは願えば彦星が撃ち落とす物】
少女は、刀だった。それも、違う刀を束ねて力を大きくするという恐れ多き力だった。
わたしは、彼女を間違えたことに使うつもりはなかったのだ。
しかし―――それが起こってしまったからにはもう取り返しが付かなかった。
彼女は暴れた。束ねた刀を使い、村を、人を斬っては捨て斬っては捨てを繰り返した。その風景は地獄絵図としか例えようがなかった。
一つは炎を操る何物も打ち砕く大刀。
二つは雷を纏う曲がり刀。
三つは闇を彩る鍔無しの短黒刀。
四つは光を欺く二つの姿を持つ、数珠が巻き付いた双刀。
最後の一本は、口に出すのも恐ろしく、最も人を斬り裁いた罪深き蒼の刀。
わたしは彼女を封印することに力を注いだ。憎いことだ。自分の作り上げた赤子同然の子が人を殺し、そしてその子をわたしは永遠に封印しようとしているのだ。
そして、わたしは彼女を封印することに成功した。
何人もの命を盾にしながら、わたしは五本の刀を使い荒ぶる彼女に涙を流しながら訴え掛けた。上物の着物が破け、わたしの頬も彼女の刀の刃で一筋の傷が付いた。
ここに、もし、もしも彼女が再び目覚めることがあったとき、わたしが施した封印の方法を書き記して置く。絶対にしようする未来がないことを心の底から祈っている。
俺はツルギが肩に背刃を乗せて担いでいるような体勢の大刀に目を奪われていた。
鍔…つまり刀の刃の付け目の部分にある支えが刃の大きさを支えるように固定されている。
一番奇妙なのは、刃が不気味に赤く光っていることと、その刃が炎で燃え盛っていることだ。ツルギは肩に乗せて炎が触れている筈なのだが熱がったりしない。
「これは吾の五宝刀の一つじゃ。名を鬼丸国綱という」
刃は横に広く、縦はツルギの身長より長いだろう。
「え…な、何だそれ…」
「む?だから鬼丸と言っておろう。わからん若造じゃな」
そういえばツルギがあった時に出してた刀も蒼いオーラみたいなのを出していた気がする。って言うことはあの炎も手品とかじゃなくて本物か…?
「やはり常人ではこれは驚いてしまうな。おっとっと…」
――――――バキィィィイイッ!!!!ズゴォオオオオオオオオオンッ!!!!!
「アアアアァァァァァアアアアアアアア"―――――――ッッッッッッッ!!!!!!!!!!?」
ちょっとシリアスになっていたのもつかの間、重量にふら付いたツルギが担いでいる大刀ごと部屋の壁に突っ込んだ。壁が文字通り抜けた。
いや、ツルギの重量じゃないんだろうが大刀の重さかなんかで綺麗に人の形で抜けている。
離れ部屋が崩れなかっただけマシとかそういう問題ではない。
「なにやっちゃってんのッ!?ドリ○!?ド○フの大爆笑の真似がしたかったの!?」
俺が驚きながら言うと、開いた穴から顔をにょろりと出して来た。ちなみに開いた穴の先は外である。地面がどうなってるやら。凄い効果音したよね。
「いや、出したの久し振りだから少し鈍っててな。大丈夫じゃ」
「聞いてねぇ!お前の無事とか聞いてねぇ!壁が抜けた!」
「おぉ!綺麗に吾の姿が抜き取られているな!」
「歓心すんな!こっちは生憎泣きそうなんだよ!蔵とこれの修理しなくちゃならない!」
どうやらさっきの物騒な刀は仕舞ったらしい。どこに仕舞ったのかもわからんが、とにかく見えないところにある方がこっちもドキドキしないで済む。
「う〜む、鬼丸は少しまずかったか…」
顎に手を当てて今更ちょっと反省をしている…ようには見えない。
「なら今度は三太刀を――」
「やめい!もう一発あんな穴開いたらマジでドリ○になるわ!家が壊れる!」
こいつはやりかねないと本気で思ったので止めに掛かる。
壁に穴を開けた張本人は腕を組んで「今度は大丈夫だッ」と調子に乗っている。
「失敗をしてしまっても天を裂くほどの雷がここに落ちるだけ――」
「殺る気だな!?俺をごみを掃除するみたいに殺る気だな!!」
「何をやる気か知らんがとりあえず今日は疲れた…寝床を敷いてくれぬか…?吾は睡眠が食と同じことなのでな…」
暴れるだけ暴れたら今度は布団を敷けだと……?
明日絶対こいつを修理の手伝いに使おう。外見も中身も子供みたいだが腕力はボディービルよりも凄いだろうし、きっと時給千円くらいの働きをしてくれるだろう。
というわけで押入れから敷布団を出す。暑いからこれで丁度だな。
「待て…一枚しかないよな普通に。いや、俺のところ人が来る訳ないし…」
独り言が何故か北極の夜のごとく極寒だ。友達いないって宣言してるようなもんだな。
いや、だって今は夏休み中ですし、こっちの学園に通い始めるのは夏休みが終わってからだ。友達いないどころか一条院家の敷地内での閉鎖空間勃発中だ。コンビニ行ってねえなぁ…俺。
「どうかしたのか若造…ふぁぁぁ」
落ち着け!相手は幼女に近い生意気な不思議少女だ!
手を出したら犯罪だ。というか警察連行の前に茉理にボコボコにされて死亡だ。
いや待て俺。最近のエロゲでは小学生じゃないか?と思える子が攻略対象として人気をはくしているではないか。というより女装した美少年の方が人気出ているゲームもある。
これはギャルゲ的に言わせればフラグなのか。
「んにゅ…むにゃ…」
一枚の布団の中で小さい少女が寝返りをうちながら静かに寝息を立てている。
その一枚の布団には俺も入っている。仕方なかったんだ罠なんだ。だから俺一人しか住んでないところに布団二枚置いてる一条院家じゃねえんだよ。親切の親の字を掛け軸と一緒に真っ二つにしちまう奴等なんだよ。
――――むぎゅぅうううううううう
「んん〜〜〜〜〜〜♪♪」
ヌォオオオオオオオオオオオオオオオ抱き着くな!その生娘の姿で抱き着くなぁあああああああああああああ―――――――――!!!!!!
脚を腰に絡めて来ているし抱き付いて来ている。抱き枕状態だ。
そういや俺女運なかったもんなぁ。妹はいたけど対象として見れたらある種の病気だし、勉強とかで忙しかったから女の子と話す機会もなくて。いるとしても野郎とだけだった。
そんな彼女いない暦=年齢な俺が!いま!女の子と一つの布団で寝ている!
「んにゅ…ん〜、あむ」
――――――――――――食べられた。耳を。
どこのエロゲだこれは。声を上げ掛けたぞコメディみたいなやつ。
「ヌィカトォオオオオオイツオトキィォイイイイイイ――――……ッッッッッッッ!!!!!!!」
やべえ言ってることが意味不明だ俺。
仕方ないだろ…いつもボコボコにされている理由の茉理だって可愛く見えるほど欲求とか色々あるんだよ。お年頃なんだよ。
『冬兎…あたし、あんたのこと…』桜咲く学校にて
『ほら、お弁当。食べさせて上げるから、口開けなさいよ…ほ、ほら、あ〜〜ん』学校の昼休みにて
『ば、ばか。好きとか言われても………わ、わたしも…す、好き…』クリスマスイブにて
こういう想像とか妄想とかでいっぱいなんだよ!
あいつ外見だけは良いから夢見ちまうんだよ!金髪碧眼で高飛車な彼女がデレになるのは漢の夢だ!ツンデレフェチジャァアアアアアアアアアア――――――ッッッッッ!!!!!!!!
「…ん〜〜〜〜♪」
またもや抱き付かれる。
二条院、夏。天国と地獄は紙一重の意味を知った日だった。
今回はちょっとしたエロエロ話になってしまいました。
というわけでギャグがちょっぴり少なめです。
笑えない場面があったかも知れませんが、それはお見逃し下さい。
刀は二本目。
ツルギが最初に出していた刀とは違うものでございます。
わからないという方は
wikiでググってみましょう。童子切安綱です。
小説に出ている刀は全て幻の刀ということですね。
ついでに、童子切が本命で、安綱とは作った職人を指しています。
ツルギが刀を出すときに職人の名前をつけて言うのは、その方に礼を込めてということ。
まぁ、本当に童子切安綱とは言われてるんですがねw
鬼丸は炎の力を持つ朱雀の羽を刃に溶かして作られた…と、どこかのサイトで見ました。
五宝刀はそれぞれ、伝説の生き物の体の一部を刃に宿しています。
どれがどれになるかはお楽しみでw
それではまた次回でお会いしましょう〜