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【茉理ルート】壱ノ太刀『あんたとあたしとバカと風邪』

「――――あ~ん」

「……何やってんだお前」

 俺はお粥を持ちながら固まった。ついでに粥はカツオ出汁の自信作である。ちょっと煮た長ネギが良いんだよねこれが。

 そんな俺に頬を紅くしたこの子は小さく口を開いて来ているのだ。ギャルゲーかこれは。

 文化祭までもうちょっとだと言うのになんでこんなことになってるんだろう。

「は、早くしてよ…冬兎」

 不満そうに冷ピタを額に付けた可愛いのはそう言う。いちごちゃんだ、いちごちゃん。

 俺は仕方なく粥をレンゲに乗っける。こいつ、こんなこと言ったっけか。

「あ~~ん…ん、美味しい…」

 レンゲを口に含んだ可愛いのはいつもは見せない自然な笑顔を見せて来る。ダメだ、なんか俺までおかしくなりそうだ。

 ことの始まりは五時間前になる。



「あ…おはよ」

 朝飯を運び終えたと同時にいつもよりやる気なさ気な声が聞こえて振り返る。

「おうおはよう。飯はもう出来て…って、お前顔真っ赤じゃねぇか!?ちょっと待て」

 俺は茉理の肩を掴むと額に手をやる。最初はなんか抵抗して来ていたが、直ぐに大人しくなってしまい、俺に体を預けて来る。38.5分ってところか…高いな。

 茉理を失礼ながらお姫様抱っこする。

「な、ば、バカ…はなせぇ」

 お前こそバカだよ。なんでこんなんになってまで起きて来たんだ。

「お兄ちゃんどうかしまし――お姉ちゃんッ?」

 台所から出て来た茉鶴ちゃんが驚いて脱ぎ掛けていたエプロンを落とす。

「あぁすまん茉鶴ちゃん、冷ピタと体温計持って来てくれ。俺こいつ寝かしてくるから」

「わ、わかりました!直ぐに持って来ます!」

 言ったことを直ぐに実行してくれるとは、君は良いお嫁さんになりそうだ。

 とと、それよりもさっさと茉理を部屋に連れて行かなきゃな。しかし、バカは風邪引かないとか言うのは嘘だったんだな、うん。


「それでは兄さん…行って来ます」

「若造、小娘をちゃんと見てやるのだぞ。吾は…その、釣りに行きたいのでな。今日も大物だ」

 夏栗鼠は休むと言い張ったが、転校したばっかりのこいつは早くクラスに馴染ませないと、という理由で却下。兄バカですみません。

 てか昨日台所にデカイ魚を置いたのはこいつか。ついでに茉理を置いて釣りかこのガキャア。

「ツルギちゃんもきっと、煩くしないように気を使ったんだと思いますよ。それではお兄ちゃん、お姉ちゃんをお願いします。もう学校には電話を入れてますから」

 茉鶴ちゃん、君は残された良心ダネ?この子にも夏栗鼠と同じ理由で遠慮して貰った。俺は実を言うと出来る限り学校に行きたくないのだ。あのハグ集団のところには一生行きたくない気分である。

 皆を見送ると玄関の引き戸を閉め息を吐く。

「よし!家の掃除に洗濯に看病!全部やってやろうじゃないか!」

 腕まくりは気合の証!さっさと終わらせてから粥でも作ってやらないとな。

 

 主婦のようにテキパキと掃除をし、洗濯をし…あの縞々のパンツは茉理のだよな…粥を作る。

 市販のカツオ出汁を入れ、薄味にしてから細かく刻んだネギを入れる。病気の時にはこれが良いんだよな。それと卵卵っと…。

 落とした卵を混ぜて味を確認する。うん、良い味だ悪くない。それとポカリとかあったっけ。スポーツドリンクは欠かせないよな。

「お、あったあった。何であるんだポカリ…」

 青いパッケージのスポーツドリンクを睨んだが、賞味期限も問題無いようなのでこれを容器に淹れて持って行こう。なんて優しい俺、家事なら全然疲れないからいいんだけどさ。

 とりあえずレンゲと小鍋の粥、ポカリを持つと廊下に出る。

 障子の前に立ち、足で引き戸を開く。なんともプライバシーの無い家だ。

 少し甘い匂いがする部屋にぬいぐるみがあり机があり、少し女っ気ないかなと思える部屋。なんだか懐かしい感じだ。入ったのは随分前だもんなぁ。

「あ、冬兎…」

 上半身だけ起こした体勢で俺を見てくる茉理。ベッドからだからか、(はかな)げに感じる。ツーテールじゃないロングの髪が茉鶴ちゃんを思わせる。やっぱり姉妹なのである。吊り目じゃなきゃもう双子だ。パジャマにプリントされているクマがこっち見ている。

「ほいほい大丈夫か。取り合えず飲めポカリ」

「シーエムの宣伝かあんたは。ん、まぁ…ありがと」

 明日は槍でも降るんじゃないだろうか。茉理が俺にお礼を言うなんて。

「失礼なこと考えてると殴るわよ…?」

「ごめんなさい殴らないで下さい。お前なら本気で殴り掛かりそうだから止めて下さい」

 俺からポカリ入りのコップを受け取るとちびちびと飲み始める。なんだかリスみたいで可愛いな…外見が良いだけに可愛さ増大だ。これだけなら役得だな。

 見られてることが不満なのか茉理は(こっちみんな)みたいな視線を向けて来る。

「はいはいごめんなさい。ごめんなさいついでにお粥もあるぞ。食欲あるか?」

 訊くと恥ずかしそうに頷いて来る。いつもこうならなぁと思わずにはいられない光景だ。

 とりあえず受け取った空のコップを床に置き、粥を手に取る。ちと熱いな容器が。鍋だから仕方ないか。

「ねぇ……その、あ~ん…ってして…」



 自分でも言った言葉が信じられなかった。風邪で頭がおかしくなってるのだろうかあたしは。

 目の前でバカがバカな顔をしてる。こんなこと言われるなんて思ってなかったんだろう。

「――――あ~ん」

「……何やってんだお前」

 もう何を言われても関係ない。ここまでやっちゃったら同じ。無理って言われたら冗談で済ませば良いの、いつもみたいに。

 布団を強く握り締める。なけなしの勇気。もうこれ以上あたしから出ないんだから。

「は、早くしてよ…冬兎」

 そう言って急かすと、戸惑っていた冬兎はあたしの前に粥を乗せたレンゲを差し出して来た。

(う、嘘…ほ、本当にやってくれた…)

 あたしから言っておいてなんだけどどうすればいいかわからなくてちょっと動転してしまった。

 だけどしてくれたんだから食べなきゃ。そう思ってレンゲに口を寄せる。

「あ~~ん…ん、美味しい…」

 なんか幸せだ。こいつがこんなことやってくれるなら、風邪も良いかも知れない。自分で言うのもなんだけど、これくらいでこんなに嬉しくなるなんて、安い女。

 でも…本当に料理上手くなったなぁ。嬉しいような悲しいような。

 薄口の味の粥が口の中で広がって…その温かさでなんだか視界が潤んで来た。

「えへへ…美味しい…美味しいよぉ…」

「ば、バカなに泣いてんだ!どうした、どっか痛いか!?不味かったか!?」

 なんか久し振りに優しくして貰ったのと、あたしにだけ作ってくれたって思ったら泣けてきちゃった。本当に、朴念仁で鈍感で…時たま優しいからあたしは好きになったんだ。

 泣いてるあたしを心配そうに見つめる冬兎。ホント、どうしようも無いくらい好き…好き。

「おい、吐いていいんだぞッ。ほら、袋あるから!」

「美味しいって…ぅ…言ってるじゃないばかぁ…」

 好き好き好き。大が付くくらい好き。優しいところもぶっきらぼうなところも不器用でバカなところも料理が上手いところもカッコ付けたがりなところも変なところで自信無くすところも…ぜんぶ、ぜんぶ好き。

 こいつを前みたいに諦めない奴に戻したい、それは嘘じゃない。

 だけど、本当はこいつの隣にいたい。誰か違う人がいるなんて嫌。あたしがいたい。ずっと隣で見つめてたい。


「―――冬兎、好き。好き…ッ好き好き…、好きッ」


 だるい体を動かしてやつの首に手を回して、子供の頃から言いたかった言葉を言って、

 あたしはファーストキスを失った。

 キスの味は…薄いカツオ出汁の味がしていた。

はい、茉理ルート突入です突貫です駄々甘です。

見てて自分で書いたのか…?と疑問が湧くほどギャグ無しです。

……すみませんちょっと水飲ませて下さい。ここまで甘いの書いたことないです。


ココアうめぇ…

じゃなくて、ここから共通ルートを外れて…


『他のキャラどうすっかなぁ』と考えているところです。

う~~~~ん、はてさて出番が少なくなるキャラは誰なのでしょうか。

全員満遍無く出したいところです。

ついでに最後にハーレムルートとか考えてます。すみません首くくらせて。

っていうかいっそ殺してくれ。


それではまた次回にお会いしましょう

see you again

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