弐十六ノ太刀【牛乳って…え、えろ(ry】
『吾を殺しの玩具にしたのは貴様等じゃ…。吾の蒼い刀を紅く…鮮血に染めさせた!吾を悪とした!吾を鬼とした!獲物を…獲物を人とした!許し難い、罪深い、欲深い人間ども!』
もう人は信じられん。いや、信じてはいけんものじゃ。最初からわかっていたではないか。吾は半妖、人間との幸福は有りなんと。
何故すがろうとした。何故追いすがろうとした。
わこうてる。それは吾が一番、誰よりわこうていることじゃ。
吾は―――寂しかった。一人ぼっちは辛うかった。救うて欲しかった。手を差し伸べて欲しかった。嘘まみれでも良かった。泣きたくなるほどの寂しさを抜け出せるなら、偽りで彩られた温もりも感じとうかった。
『…要らんのじゃ。人は…温もりは…血は…要らんのじゃぁ…』
嗚咽が喉から漏れる。腕で掻き抱いた鞘に納まる刀を握り締め、吾は無くすことにした。感情を。正義があるから悪があるように、希望があるから絶望がある。
無くすのじゃ、全て。期待せぬ様に。もう―――裏切られないように。
「冬兎、帰りましょ」
帰路に着こうとしたところで、男子門に寄り掛かっていた茉理の声が掛かる。
「お、待っててくれたのか」
「…べ、別に待ってないわよ。それに大変だったんだからッ。紅葉の葉が頭に落ちるし変な男子どもが何回も声掛けてくるし!」
今はその男子達の嫉妬の視線が俺に突き刺さっているのですがね?背中が痛い痛い。
しかしあれだな、ニーソックスは縞々でも良いな。流石茉理さん。色々と押さえているよポイントを。
「兄さん…何かにやけてるように…見えますよ?」
夏栗鼠がいつの間にか俺の隣に立っている。長い黒髪が無表情の顔を彩っている。黒タイツとは、また妹もいいとこを押さえてるな。
「にやけてないヨ?」
「……そうですか。それと、片言は…コウデスヨ」
流石声優だ。上手過ぎて反論の余地が無い。どうすれば良いんだ俺は。
まぁこうなると、あれだな。両手に花だな俺。嬉しい嬉しい。ホクホクです。
「どうだ夏栗鼠。転校初日は」
実は最も心配していたことを無表情の妹に向けた。こいつ口下手だからなぁ。俺が女子校舎に行ければ良いんだが…まぁ行けたりはするんだが出来ればしたくない訳で。
妹君は敬礼のようなものをする。
「別段…心配無し。ただ…声で騒がれた…」
まぁそりゃそうだよなぁ。アジエルスのCMでもやってるし。
「『世界が嫉妬する髪へ…美しい貴方へ送るアジエルス』」
「最近俺の知り合いは俺の心読むの好きだよねぇ!?なんでわかんの!?もう疑問しか無いんだが!」
「兄さん、良く…顔に出ます」
「"アジエルス"って顔に出てるのはホラー以外の何物でも無いよな!?」
俺が夏栗鼠に真剣に兄妹の関係について話そうとした時、目の前に金髪が割り込んで来た。
「仲が良いのは良いけど、せめて別の場所でやりなさいよね。ツルギも遅れると駄々こねるでしょ」
やべッ。最近あいつ影薄いから忘れてた!
「へっっっくち!…あぁ!せっかく10円玉を三枚まで積み上げられたというのに…!」
見るも無惨に大業は崩れ去っていた。
『…あのね…最後に言いたかったんだ』
『…なんだ?』
「『愛し…て…る…』」
「あのさ、自分の出てるアニメだからと言って俺の背後と前からの挟み打ちは止めてくれないか。なぜか俺だけにはステレオなのよ」
「この役…監督が惚れ込んで二期を…!とか意気込んでた…。また出るかも…」
その裏事情要らなかった…ッ!感動を!このヒロイン死んだと思って潤んだ涙腺を返してくれ妹よ!
だがそんな裏事情知らずに茉鶴ちゃんは涙を流している。純粋過ぎる…。
「あ、絵羽 カリスって出てます…」
「いや知らんかったんかい。ヒロインやってるのこの子ですよこの子」
「はい…ヒロインです」
「うわぁ…い、生き…ぐす…生き返ったんですねヒロインの子」
なんか夏栗鼠が死んだことになってませんか茉鶴ちゃん?夏栗鼠の頭を抱いて泣いてるところを見るとどうもその通りみたいだね?
夏栗鼠は口を△にしながら(困った…)という心の声を俺に送って来る。
(感動してるんだから何かヒロインの声で言ってやってくれ)
俺が交信を返すと夏栗鼠は一瞬考えてから――、
「かまぼこ…大好き…」
「ま、茉鶴もかまぼこ好きです!ヒロインさんもかまぼこ好きだったんですね!」
「――――ねぇ、宇宙人と交信でもしてるの?あたしの妹とアンタの妹は」
「なんでこうなったかもわかんねぇんだけどな?風呂上がったのか」
俺が横を向くと体から湯気を出してる茉理がTシャツ一枚で牛乳ビンを握っていた。長く白い足が裾から伸びている。いや、これは刺激的だな。
そして冷蔵庫を漁っているもう一人のTシャツ。おいおい前屈みだとパンツのしわまで見えるぞ。
ん、なんでパックの牛乳を両手で掴むんだ。かなり入ってるぞそれ。
「んぐ…んぐ………ぷはぁッ」
――――――――飲み切りやがった一息で。凄いとしか言いようがねぇ…。
「ほらツルギ。牛乳ひげ付いてるわよ」
「ん…あ、ありがとうなのじゃ。小娘にしては気が利くのうッ」
こら、俺に(蹴っていい?蹴っていい?)って返答を求めるな。生意気なクソガキだけど子供なんだよ我慢しなさい茉理さん。
ツルギは牛乳のパックを片手で潰すと、とてとてと俺に近付いて来た。
「なにを観ていたのじゃ、若造ッ」
――――ポスン
その時、冬兎に電流走る。
幼女とは言えソファーに座ってる時に足に乗られるのはくるなぁ…。
「病院と愛とかまぼこの話」
「………にょ?」
言ってることがわからな過ぎたのかツルギは身体年齢にあった声を出す。そりゃねぇ…「白のところが茉鶴は!」「ピンクも…捨て難い」…わけわかんないもんね、どっちも魚の白身だもんね。いきなりこの状況を見たら俺は妹へのショックで失神するかも。
茉理は俺の隣に座って足を組むと牛乳をちびちび飲み進める。飲み方が女の子ですね。飲み方だけですけどね?
「ツルギ、そろそろ離れに行くか」
「ん、そうか。ん~~~…でも最近寒いからのう。少し名残惜しいのじゃ」
「だったらこっちにいても良いぞ。俺一人で行くし」
俺が言うとツルギは膝の上で有り得ない跳躍をし、俺と真正面に向き直る。
「わ、吾と一緒は嫌か…?」
「いや、どっちでも。それとこの体勢はお茶の間の誤解を招くと思うので止めろ」
ちょっとでも下を向くとぶかぶかのTシャツから見える目に毒な白い脚。その上に縞々のピンクパンツ。ダメだ、俺はロリコンじゃないロリコンじゃない。
――――パリンッ(牛乳ビンが割れるような音
きゃぁぁああああああああああ茉理さん牛乳ビン割れてるし牛乳が手から滴ってるし!そんな簡単に割れるものじゃないよ牛乳ビンは!
「ろりこん…ッ」
いつもなら文句とか仕返しとかするんだが、後ろに虎が見えると何も出来ない。
「な、なぁ若造」
ペットショップのチワワみたいな目をするな擦り寄るな。嬉しいんだが縮む、俺の寿命が縮む。今まさに隣からの殺気で10年は縮んでるから。このままじゃ俺20まで生きられないよ成人ならないよ。
茉鶴ちゃんか夏栗鼠に助けを…まだかまぼこしてるんですね、わかります。
「茉理さん…こ、これはチガウンデス」
「へぇぇぇぇぇぇ~~~~…言い訳があるなら3秒でどうぞ…?」
「ツルギ退け!っよし!やってやらぁ…ぶっ!ちょ、鳩尾はダメだ…げふ!ぐあ、し、死にゅッ!おふぁ…ッは、反げ…ぶふ!?う、嘘です!もう戦意喪しつぶぅ!こ、今回俺悪くな――んざれすッ!あ、顎はやば…いぃッ」
「おぉ…格闘ゲームのいじめかっこわるいみたいになっておるの…」
お久し振りです!というかなんか久し振り過ぎて投稿出来た気がしません!
出来てなかったらどうしよう…
と、とりあえず、前回は続きを、今回は妹ちゃんを馴染ませる為の話にしてみました。
どうでしたでしょうか。
妹ちゃんのキャラは大幅変更してあるので混乱するかも知れませんがご承知下さい。なんかハイテンションで、小説の方も飛ばしております。
ついでにツルギの出番少なかったのでちょっとサービスカットを入れておきましたw
ここらへんで妹のキャラを掴んでくれるとうれしいです。
それではまた次回~!