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弐十伍ノ太刀・後【追跡、セーラー服】

 結果論から言う。杏樹とツルギを撒いた。いや、撒けたと言った方が正しいか。

 意味の無い方向指差して「あぁ!あそこに赤い飛行機運転してる豚がいる!!」って言ったら「ジ○リもビックリ!」とか言いながらどっか行ったし。

 最初からこれしてりゃ良かったな…。

 そんな訳で俺は一人、ちょっとまともなセーラー服姿に着替えて茉理達を追っていた。カツラは黒のロングである。いやぁ、我ながら女顔だなぁおい。

 って自分に絶望してる場合じゃないな。追跡追跡っと。


 まぁ、案内するならここでも不思議は無いわな。

「だけど、公園とかはトラウマがあるんだよなぁ…」

 主に黒服とかくろふくとかクロフクとか。もう二度と会いたくないわあれには。

 噴水の影に隠れながら三人の女子を見守る俺こと美少女探偵…あぁ、あれだ、雰囲気作りだよ雰囲気。こうでもしなきゃただのギャグみたいなんだよ。

 …声聞こえねぇ…。バカか俺は。距離が遠過ぎるんだよ…ッ。だけどここまでじゃないと茉理が気付くんだ!まぁ、見てくれよ。


「ッッッッ!!!!」


 ほら、ちょっとつま先を進めたら金髪のツーテールが逆立った。妖怪○ーダーかあれは。アホ毛じゃなくてツーテールとはやるじゃないか。

 こんなことになるなら盗聴器でも用意すりゃ良かったな。

 待て待て、妹が心配だからってストーキングはまずいだろッ。冷静になれ俺!

「…ダメだ、もうセーラー服の時点で冷静じゃない」

 俺はこれからこんなキャラとして定着していくのだろうか…嫌過ぎるぞ。

 こうなったらホフク前進だッとか思ったが進んだらまたパツキンの髪が逆立った。手詰まりだよ畜生。



「変わってないんですね…ここは」

「ま、商店街を歩けば魚屋のおじさんが声を掛けて来たりするからね」

 夏栗鼠が座ったベンチの隣に腰掛けて息を吐く。結構前から変な気配を感じたりしてる。もしかしたら夏栗鼠のストーカーかもと思って警戒はしてるけど、相手が何も手出しをしてこない。

 きっと茉鶴も気付いてるだろうけど…この子は他人を疑うことを知らないから。

「茉鶴も久し振りでしたけど、変わって無さに驚きましたから」

「そうですね…それと、わたしは…茉鶴ちゃんが大きくなってることに…驚きました」

 夏栗鼠はあたしと逆方向に座ってる茉鶴の頭を撫でながら嬉しそうに言う。でもこの子がセイユウ…?アニメとかそういうのの仕事してるなんて正直信じられない。人見知りする方だったと思うし今話してる声には余り感情が乗ってない。…そりゃテレビで聴くと違うんだけどさ。

「えへへ、修行頑張ってムキムキになりましたッ」

「……茉鶴ちゃんは…ムキムキにはならないで…欲しいです」

 あたしもそう思うわよ。「お姉ちゃんー!わたしーこんなにムキムキにナリマシタァ~(ごっつい声で)」とか、もう想像しただけで鳥肌が…。


「それと…茉理ちゃんは…兄さんと…どうですか?」


 無表情で茉鶴の頭を撫でながら訊いてくる夏栗鼠。最初は意味がわからなかったけど、徐々に顔に血が上ってくる。

「またそれ!?ねぇ、あたしとアイツはどんな結び付きなわけ!?肉屋のおじさんにも言われたんだけど!」

「…お似合いだと…思うのですが…」

「そ、そそそそそそそそそんなことないわよッッ!!あたしはッ!!」

 続きを言おうとしたが、夏栗鼠の無表情が微笑んでるように見えて、あたしはソッポを向いた。何か自分から底なし沼に足を突っ込んでるようだ。

 茉鶴も笑顔であたしを見てる。…なんかあたしだけ照れてるみたいじゃないッ。

「お姉ちゃん、素直になった方が良いと思いますけど…」

「し、知らないわよ!」

 気まずくて噴水の方向を向くとセーラー服の子が犬に足を叩かれ、それを苦笑いで見ている少女が見えた。そして問題なのはセーラー服の子の方である。あの背中―――まさかッ、



 もうこの体勢疲れた…。あれだ、中腰って以外に辛いんだぜ?もう全然茉理は隙を見せないし。

 帰ろうかな。よくよく考えれば茉理はそこらのボディーガードより段違いくらい強いし、ここに来た理由とかもいつでも訊けるし。

「もしかして、二条院くん…?」

「ぎゃぴぃぃぃぃぃ…ッ!!!?」

 いきなり背後から声を掛けられ、有り得ない声を出しながらゆっくり首を動かす。

 ポニーテールを揺らしながら前屈みで俺のことを見てる美少女がいる。もしかしたらここから恋が始まるとか…無いわな。

「鐘茜卯さん…?」

「は、はい、お久し振りですね。ルーチェスのお散歩をしていたら偶然後姿が見えたので…声を掛けてしまいましたが…その、お取り込み中ですか?」

 どうやら鐘茜卯さんは俺の格好を見て言ってるようだ。セーラー服ですもんね、なんで俺とわかったか訊きたいんですが良いでしょうか。

 見ると鐘茜卯さんの手から伸びている赤いリードの先にはシベリアンハスキーが繋がれている。ピンク色のリボンから見ると女の子か。ルーチェスとかオサレな名前ですな。

「いやいや、別に用も何も無いですよ?」

「そ、そうでしたか。あ、こらルーチェスっ」

 ルーチェスは俺の傍に来るとニーソックスの足を前足で叩いて来る。犬パンチかこら。

「あはは、痛くないから大丈夫ですよ。きっとじゃれてるだけですから」

 めちゃくちゃむかつくけどな。焼いて鍋にするぞ?

 俺はルーチェスをあやしながら鐘茜卯さんに向き直る。

「これは…仕方ないんですッ」

 セーラー服を引っ張りながら真剣に言う。こういう性癖とか思われたら困る。俺の中では鐘茜卯さんは憧れの人なのである。ほら、清楚で優しいだろ。

 俺が言うと鐘茜卯さんは少し驚きながら「わかってますよ」と言ってくれた。癒しだオアシスだ。


「鐘茜卯さん、出来れば…これから俺とッ――」

「何やってんのよ女装大好きストーキング野郎…ッ!」


 お茶でもと言おうとした瞬間凄い握力で右肩を掴まれた。釘宮さん…?

「ま、まままつ、まつりん…?」

「はい、まつりんよ。ついでにあんたのその不思議な格好は何かしら?」

 右肩が、右肩が壊れてしまう…。壊死とかってあるのだろうか壊死とかあるのだろうか。

「茉理ちゃん、こんにちは」

「はいこんにちは先輩。ちょっとあたしはこの人に用があるので、これで失礼しますね♪」

「まつりん!ちょっと待ってくれ!訳だ訳を聞いてくれ!あ、夏栗鼠!夏栗鼠!どうか、どうか兄さんを助けてくれ!」

「アナタハダレデスカ?」

「あぁなんというアニメ機械ボイス!ちょっと待ってくれ!茉鶴ちゃんなら解ってくれる!あ、茉鶴ちゃんがルーチェスと(たわむ)れてる!?そしてルーチェスが『どや?』みたいな顔してる!もうやだこの展開――――ッッッ!!!」


 ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……す


「えへへ、ルーチェス~。ほらほら、ごろごろ~♪」

「わぁ…ルーチェスが転がるの始めてみました。絶対服従のポーズでしたっけ」

お、お久し振りです!

後書きは次の話に詳しく書きますので宜しくお願いします!

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