弐十伍ノ太刀・前【追跡、チャイナ服】
…俺さぁ、こんなに苦労するキャラじゃなかったと思うんだ…。こう、「あの先輩カッコイイよね、キャーキャー」までは無いにしても、ちょっとモテるくらいはあっても良くね…?良いんだけどさ。女の子はべらせまくって死ぬよりは。
いや、やっぱり前言撤回だ。性格器量良しの俺にゾッコンな子が欲しい。出来れば黒髪のロングの子が良いな。大和撫子みたいな子。
「いえ…こっちの方が、茉理ちゃんには…似合うと思いますよ」
「あたし、別に服にこだわって無いんだけど…Tシャツで良いし」
「せめて…全面に"大漁万歳"と押し出されてるシャツよりかは…ワンピースにしてくれたほうが…嬉しいんですが」
「お、お姉ちゃんは昔から着る物にこだわってませんからね」
あいつの服装の選び方の雑さを教えてやりたいな。前なんて"働きたくないでござる"とか前にプリントされてるTシャツ着て来たし。それを見た時の俺の世紀末な表情を見せてやりたいよ、マジでな。
「…なんで俺こんな格好してんだ」
「だって〜フユがナッちゃんの尾行したいって言うから〜」
せめてこのロングカツラと女装じゃなけりゃ満足なんだけどな。尾行するのにここまでするのか普通。あぁ、黒髪のロングの子が鏡に映ってるよぉ。ミニのスカート穿いてるよぉ。
こうなるんだったらせめて涙辺りを巻き添えにすりゃ良かった。会長でも良いや、道連れにすりゃ良かった。こいつに、杏樹に頼んだのは間違いだった。電話する前に気付けよ俺。
「いやしかし、いつ見てもここら辺りは凄いのぅ」
デパートメントはやっぱり商店街とは活気が違うからな。そりゃ凄いだろうよ。
「ってバカツルギ!行き過ぎ行き過ぎ!見えるから!茉理達から見えるから!」
「ぐえぇぇぇ…げほッげほッおぇぇ……襟首引っ張るのはやめるのじゃ…」
すまん今のは俺が悪かった。せしめても美少女(腹真っ黒だけど)の襟首を引っ張るのはいけない。しかし今のはこの無理言って付いて来たアホ娘が悪いのだ。
「ツルギちゃん、シーッだよ」
「応なのじゃ」
グラサン掛けて変装しているロリに女装男。それに加わっている黒髪ロングの俺。
「テメェら自分達が場違いってわかってる?ねぇ、浮いてるんだよ?見てよ、子供連れのお母さんが『見ちゃダメよ!』ってこっち見てる子供に言ってるよ。なんかもう俺帰りたくなって来たよ。ていうかテメェら帰れよ。俺一人だけで用事は事足りるんだからさ。ねぇ聞いてる?ねぇ」
あぁもう、なんかもう、嫌…。
なんで俺がチャイナ服でツルギがゴスロリで杏樹がマフィアよろしくな黒服でデパートメントうろちょろしてんだ…。
大体、俺は夏栗鼠が心配――というか何が本当の目的でここに来たのか暴きたいから尾行しただけなのに。今じゃ子連れの母親どころか、男が俺に凝視で目線を向けてくるようになっている。おい、せめてツルギに向けろよツルギに。
「いやノーパンさん。この変装はわたしにも予想外だったよ」
「誰がノーパンさんか。ちゃんと穿いとるわ」
女物だけどな…あぁ、スースーするとかそれ以前の問題だ。良く杏樹こんな感じで年中過ごせてるな。慣れか、慣れなのか。
あぁ…このチャイナ服スリッド深い…。なんか太股まで見えんですけど。
「のーぱん…で良いんだな。小娘達がまた動いて行くぞ」
「締め上げるぞクソガキ。っていうかノーパン言う前にそれを言えそれを」
デパートメントをウインドウショッピングか何かやってるのか、茉理達はどんどんと移動して行く。なんでこう、女供の買い物って長いし移動多いのかねぇ。
「ねぇねぇノーパン♪」
「なんだエセマフィア、テメェも締め上げるぞ?♪」
「わたし、こういう格好するの憧れてたんだぁ♪ねぇ、似合う?似合う?♪」
――――ふっ飛ばしてぇこのなんちゃって女子…。つぅか確実に場違いだよな今の質問。帰ってくれ、家に。
「…お、ファミレスに入ったね」
そういや俺昼飯まだ食って無いんだよなぁ。出来れば普通に家で飯食ってたかったんだが…、それだと夏栗鼠の真意を探れないし。
「なぁ杏樹、飯食ってこうぜ?」
――――ありゃ、返事が無いな。
見ると銀髪のガキと女子(外見のみ)はいつの間にかファミレスの中に入って行こうとしていた。なんであいつ等俺に何も言わんで行ってもうたん?
追ってファミレスの中に入ると、「いらっしゃいま……せ」と店員が俺を見て言葉を失った。そりゃチャイナ服でいきなり女の人が来たら驚くだろ。ここに来るまでそんな常識に囚われない男にナンパされて蹴ってやったが。
「……あれの連れです…ッ」
「あ、そ、そうですよね!こちらへどうぞ!」
頭を縦に大振りするくらい納得しないで下さい。
そうした会話があってテンション駄々下がりな俺に、杏樹とツルギは茉理達が座ってる席の隣に座っていた。あぁ…なんつぅか、ちっちゃくても壁があるって良いよな。
「えびどりあ」
「BLTサンドとドリンクバーを♪」
「――――――チキンドリアとアイスコーヒー…ッ!」
視線が痛いわ空気が重いわ。なんかもう、俺お外大嫌いだ…ッ。
くそぉ…この!この痛みを和気藹々と話している女共に伝えられれば良いのに…ッ!!
なんか本気で胃が痛くなって来た。この歳で胃炎とか冗談も止めて欲しい。俺の家庭環境だと洒落になってないから。真面目になってそうだから。
「はい、フユ〜カルピス〜」
なんか手馴れてるな。そしてそのドロドロの液体はカルピスの原液だよな?薄めてないよな?なんでカルピスの"水割り"の部分がセルフサービスなんだよ。最初から普通にカルピス入れろよ。
俺は杏樹が持って来たカルピスの原液を受け取ると手元にあった水で薄める。
「えっと、…実は茉鶴ちゃんの言う通りで、無理を言って休暇にして貰って…」
「まぁ薄々気付いてたけどね。なに?仕事に疲れたとかそういうのだったら相談に乗れると思うけど」
やっぱりか。俺もちょっとは気付いてたんだよね。夏栗鼠がズルして休んで来たって。だけどそれを何で隠したのかが解らないんだよなぁ。
「あのね…フユ?」
「あんだ?こちとら本来の目的で忙しいんだよ」
「その――――フユってカルピスをコーヒーで割る人なのかなって…」
ブフゥゥゥゥウウウウウ――――ッッッッ!!!!
「ニガッマズッヴェェェッッ!!!」
なんで俺の水置いておいたところに杏樹のコーヒーが置いてあるんだよ…。俺が吹いてしまったコーヒーカルピスを拭こうと御絞りを持った…その時、
「若造伏せろ…ッ!!」
ゴンッッ!!という衝撃と同時に俺の顔面がテーブルに激突。
どうやらツルギが見付かると思って俺の顔を伏せさしたらしい。ごめん、鼻血出るとかの前に一瞬頭が真っ白になったわ。
「…お前等はなんか俺にデカイ恨みがあるのか?えぇ?」
「茉鶴が振り向いたのじゃ。幸い気付いてはないようじゃから結果…おーらい?とかいうやつじゃ」
「見付かった方がまだ良かったわ…ッ見ろガキこの顔の赤さを…ッ。いや、実際に見て無いからわからないんだけども」
赤いよな、絶対に。あんな勢いで叩き付けられたら。
ついでに急いで食ったからチキンドリアの味がわかんなかった…口の中火傷してるなこれは。
あぁ〜、もう壊れかけてますな…はい、ちょっと死んできます。
なんか今回色々とフリーダムっていました。
どうしよう…こんなんで良いのだろうか。面白ければ良いか!
……モウダメダ。
というかですね、ここまでネタ出し切るともうハイになっている自分がおります。
続きの執筆がはかどるはかどる。
次回は早い段階でうp出来ると思いますので…楽しみにしてくれてる人いるのだろうか。